(さとなかまちこ 漫画家。1948年、大阪府生まれ。1964年、16歳の時に「ピアの肖像」で第1回講談社新人漫画賞を受賞し、デビュー。幅広い分野で作品を発表し、現在まで500タイトル以上の作品を描く。代表作に『アリエスの乙女たち』『あかね雲』『海のオーロラ』『あすなろ坂』など。)
子どもの頃から18回引っ越してきましたが、一番の理想は四畳半1部屋で暮らすことです。手を伸ばせば何にでも届く。こんなに便利なことはないでしょう(笑)。便利が一番。今は本の量がすごく多いのですが、四畳半と決まっていれば否応なしに処分できるかもしれませんね。
1964年、16歳で漫画家デビューした里中満智子さん。少女にも大人にも響く恋愛もの『アリエスの乙女たち』を大ヒットさせ、持統天皇の生涯を描く歴史もの『天上の虹』を32年かけて描き上げた。日本漫画家協会理事長を務めるなど、漫画界に尽力し続けている。
三重県出身で調理師の父と兵庫県出身の母の長女として1948年、大阪市都島区で生まれた。両親は「一生懸命お金を貯めて」、賃貸の平屋から賃貸の2階建て、「物干し台から生駒山の見える」持ち家、と着実によりよい住まいに移った。幼い頃から、漫画が大好きだった。
『鉄腕アトム』で悪いとされている側にも事情や気持ちがあると気づくなど、子ども心に漫画は多くのことを実感させてくれると思っていました。それなのに『鉄腕アトム』が「悪書追放運動」の対象になって。漫画が滅ぼされる! と、とにかく漫画を守ろうと思いました。今でも当時持っていた手塚治虫先生や水野英子先生、ちばてつや先生など尊敬する先生方の本は保管してあります。
16歳でデビューし、17歳で上京。最初に住んだのは「カンヅメ」用の洋館
中学時代に漫画家になると決めたが、両親は反対。漫画家になるのなら高校の学費も交通費も出さない、と言われてしまう。
高校ぐらいは行きたかったので、学費が安くて交通費がかからなくて、男女共学で、演劇部のある高校を自分で探して。歩いて行ける大阪市立(現・府立)桜宮高校に入りました。演劇部に入ったのは、ほかの人と一緒にドラマ表現をしてみたかったからです。漫画は1人で作るものなので。
漫画は親に隠れてこっそり描いていました。妹が廊下で本を読みながら、母が近づいてくると鼻歌で合図をしたり、話しかけて時間を稼いだり、協力してくれましたね。
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source : 週刊文春 2022年11月03日号