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『めちゃイケ』『イッテQ』『モンスターハウス』……バラエティと“ウソ”を考える――佐久間宣行×てれびのスキマ

「2018年のテレビバラエティを語ろう」#1

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『イッテQ』はなぜ擁護派が多かった?

スキマ うそが受け入れられないという話では、今年は『イッテQ』の「やらせ問題」がありました。

佐久間 あの問題はむずかしくて、現役でバラエティを作る僕が完全に善悪は言えないです。でも、『イッテQ』の出自が「海外文化を紹介する」バラエティだから、ダメな部分はダメだと思います。「海外でムチャをする」番組から始まったんじゃないから。でも『イッテQ』に関しては、ある程度ネットも優しかったなというイメージがあって。

スキマ 確かに、ヤフコメとかでも擁護派が多かったようです。

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今年、日テレバラエティの作り手を追ったノンフィクション『全部やれ。』を出版したてれびのスキマさん

佐久間 ということは、『イッテQ』はドラマとして楽しんでいたというか、奮闘だったり、共同幻想だったりでファンをちゃんと作っていた。それは日テレの古立(善之)さんが作られてきた、『イッテQ』の見方みたいなものがちゃんと世の中に伝わったんだなと思いますねえ。あれに近い感じがしました。猿岩石がヒッチハイク旅で飛行機移動してたときに、まあヤラセだけど、それはいいじゃんってなったじゃないですか(笑)。

スキマ 最後ロンドンに着いたとき、みんな感動しましたもんね。

 僕は『イッテQ』の問題に関しては、どなたかも言っていましたけど、やっぱり『めちゃイケ』の終了が大きかったのかなと思いますね。『めちゃイケ』が批判の矢面に立ってたのが、バラエティで一番ど真ん中の『イッテQ』に移っちゃった。

 もうちょっと全体的なことを言うと、「テレビ的」なものに対するアレルギーというのが、やっぱり視聴者にはあると思うんですよ。「テレビ的」というと一昔前は「フジテレビ的」なものだったのが、だんだんと「日テレ的」な演出みたいなものになっていった。それに対して、アレルギーが出始めたのかなという。

佐久間 そこはあるかもしれないですね。

「日テレ的」と「フジテレビ的」とは

スキマ 日テレ的とフジテレビ的の大きな違いってなんだと思います?

佐久間 フジテレビは、一個一個のバラエティ番組が別々の文化を持ってる。日テレは、ちゃんと戦略的に作られている工場という感じがします。たとえばくっきーや完熟フレッシュがすごいブレークしたら、日テレで1週間ずっとくっきーや完熟フレッシュが出てたりする。

スキマ ちゃんと割り切ってますよね。僕は今年日テレバラエティの作り手たちを追った『全部やれ。』を出版したのですが、日テレはきめ細かく、それこそ1分1秒の視聴率までこだわって作ってるじゃないですか。でも、それってなんとなく見てる人にとっては親切でいいと思うんですけど、前のめりで見てる人にとっては、過剰で窮屈だったりするんですよね。

佐久間 日テレの中でも、たぶん古立さんが作られる『イッテQ』や『夜ふかし』はまた別なものだと思うんですけどね。古立さんの編集テクニックがすごく前面に出てるから。でもほかの日テレバラエティというのは、ちゃんと毎分視聴率のゲームに勝つ、そこをしっかり考えた上での作り方になっている。