「ライドシェア後進国」の日本はどうなる?
欧米のみならず中国やアジアでもライドシェアが急速に社会実装されているなかで、日本は完全に「ライドシェア後進国」の状況にある。少子高齢化や人口減少によって構造的な人手不足が深刻化しているなかで、タクシー業界は人手確保がより困難になってきている。もっとも、5年単位くらいで自動運転の商用化が拡大してくると、人が運転するタクシーではなく、自動運転タクシーがより一般化してくるものと予想される。また海外でライドシェアが一般化してきているなかで、日本でも2020年東京五輪のタイミングにおいては、一定の条件下において部分的にライドシェアが認められる可能性も低くない。自動運転化の流れは、ライドシェアの動きとも相俟って、タクシー業界に大きな影響を与えるのは確実だろう。
モビリティー産業全体について述べると、将来的には、ライドシェアの対象範囲には、自動運転車のみならずオートバイや自転車なども含まれてくることも予想される。むしろ、自転車シェアリングなど、より小さな乗り物からおさえ、そこから飛行機・鉄道・バス・クルマなど全ての交通手段を統合し管理する企業が、真のトランスポーテーション・ネットワーク・カンパニーになるかもしれないのだ。これが現在、MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス、サービスとしてのモビリティー)と呼ばれて、鉄道会社・通信会社・自動車会社などが準備を進めている動きなのである。
自動運転は次世代自動車産業における競争のポイントだが、手段であって目的ではない。社会的問題と対峙(たいじ)し、新たな価値を提供することが最も重要だ。日本特有の課題としては、少子高齢化や人口減少、そして労働者不足、過疎の問題があげられる。自動運転が、そういった問題を解決するという方向性で活用されていけば、近未来の日本人の暮らし方・働き方・生き方にも好影響をもたらすものと期待できるだろう。
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