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地元ローカル局とは「消防署」である

——一方で、一企業としては「稼ぐ」ことも至上命題ですよね。夢を描くことと、稼ぐことのバランスはどう考えているんでしょうか。

田中 もちろん企業としては利益を、テレビ局としては視聴率を、稼ぐことは使命の一つです。ですが、ローカル局の稼ぎはある程度、想定の範囲内のものなんです。視聴率もキー局に比べれば、それに影響される広告収入の幅はそれほど大きくはない。ですから、その範囲を超えた身の丈に合わない稼ぎ方をすべきだとは思わないんです。むしろ、その余力をローカル局の使命に注ぐべきだと考えます。その使命は「消防署」に似たものでしょうかね。

社長にロシア人墓地にも案内していただきました

——消防署?

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田中 はい。消防署って稼ぐことが目的ではなく、多くの人の命を預かっています。それは安心感や、いざとなったら頼りになる存在感を与えてくれる。

——テレビ局、ラジオ局で言えば、その安心や信頼は日々の報道によって作られるものかなと思いますが。

田中 そうですね。昨年は西日本豪雨で愛媛県も大きな被害を受けました。あの時、私たちはどこよりも早く現場に行き、どこよりも早く特番を打って報道すること、そして地域の味方になることを一番の使命として動きました。

「地元を報道」することは「味方」になること

——地域の味方になるとは、どんなことなんでしょうか。

田中 たとえば西日本豪雨では蜜柑の山が崩れたエリアがたくさんありました。その中には後継者がいて、これからも生産を続けなければならない農家も多かったわけですが、蜜柑ってもう一度植え直してから5年間は実がならないんです。じゃあ、その5年間をどうするのか。こういった知られにくい問題をどんどんニュースとして取り上げて、自治体や国に対して現実を提起することは地元の味方になる姿勢の一つだと思っています。

——「地元の人に」報道するだけでなく、「地元を報道」することも使命だと。

田中 はい。松山にはロシア兵墓地があり、ロシアとゆかりが深いことを多くの人に知ってもらうことも、もちろん地元を報道することですし、もしもプーチンさんが松山に来たら、多くの人たちをワクワクさせることにもなるのかなって、そんな夢を描いています。

写真=小坂ちあき

INFORMATION

©2019「ソローキンの見た桜」製作委員会

『ソローキンの見た桜』

3月22日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国公開

3月16日(土)より愛媛県先行公開

監督:井上雅貴

出演:阿部純子、ロデオン・ガリュチェンコ、斎藤工、イッセー尾形ほか