首都・東京の市街地を縦横無尽に走る「都営バス」(東京都交通局自動車運送事業)。日本の公営バス事業者最大の1476台を保有し、1日約63万人を運ぶ。昨年12月25日からは2020年の東京オリンピックを見据え、日本で初めてのフルフラットバスの導入・運行も始まった。他にも燃料電池バスの導入やバスデジタルサイネージの設置を進める。こうした新しい施策が打てるあたり、景気がいい印象を受ける。実際に2017年度の「経常利益額」は約8億2千万円の黒字だった。
実は「都営バス」本業は赤字
一方で、この黒字は補助金を始めとした「営業外収支」、つまり本業以外の利益も含めた数字だ。純粋にバスの運行だけで収支を見ると約6億3千万円の赤字になっている。年間の収入は約390億円だが、多くは人件費や燃料代をはじめとした運行費に消える。また、黒字の系統は47系統、赤字の系統は80系統と赤字の系統が多い。
もちろん、公営事業のため、不採算を理由に赤字路線を廃止するというわけではないし、補助金も都民の足を確保するための赤字路線への補助や燃料電池バスやフルフラットバスといった新型バスの購入に使われているため不要なものではない。ただ、補助金に対しては世間の目が厳しいことも事実だ。そのため、都交通局は「東京都交通局経営計画2016」で、2023年には補助金を除いても黒字化することを目標にしている。実際ここ数年、急速に赤字を減らし、バスの運行単体での黒字化ももう少しのところまできている。
利益額トップ5は“都心”を走らない
そんな都営バスを支える「稼ぎ頭」はどの系統なのだろうか。今回は利益額トップ5の路線をランキング形式で紹介し、特に稼いでいる1位の路線の秘密を探り、バス事業の利益のカラクリを探ってみた。
先ほど黒字の路線は47系統と紹介したが、黒字の路線が稼ぐ利益額のうちトップ5路線で40%を占める。そんな5路線は殆どが山手線の内側の東京“都心”を走らないことが特徴だ。
5位こそ、山手線の大塚駅前から錦糸町駅前を結ぶ「都02」系統で唯一山手線の内側を走るが、4位は西葛西駅と新小岩駅を結ぶ「新小21」系統。いきなり江戸川区の南北を結ぶ路線となる。3位は品川駅港南口から東京入国管理局を経由し、品川埠頭を循環する「品99」系統、2位は錦糸町駅から砂町銀座のある砂町エリアを経由し、門前仲町へ至る「都07」系統だ。