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天皇陛下に差し上げた“ぬるめ”のお茶

――そして平成を迎え、天皇皇后両陛下にお仕えする侍従職へと、家入さんのお仕事は変わりましたね。

2004年10月、宮殿千草・千鳥の間ベランダにお立ちになる天皇皇后両陛下 宮内庁提供

家入 そうですね。東宮職の頃は、東宮御所がある赤坂御用地に出勤していましたが、まず朝は皇居内の宮内庁庁舎にある侍従職の詰所へ行って、それから宮殿行事に合わせたセッティングや応対をするため、宮殿に向かうことが多かったように思います。

 陛下になられた後、例えば宮殿行事がある場合、1日のすべての行事が終わるまで両陛下は宮殿にいらっしゃるんです。お休みになるための両陛下のお部屋である「御座所」がありまして、そちらで待機なさいます。式部官、侍従などが次の行事の打ち合わせのために御座所を訪れますが、そうした時、私どもは一服のためお茶を差し上げます。陛下には素早くお飲みになれるように、ぬるめのお茶を差し上げていました。

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南阿蘇中学校の体育館で2度もお声がけを

――2016年5月、家入さんは熊本地震で被災した先の避難所だった南阿蘇中学校の体育館で、両陛下と再会しますね。両陛下は、家入さんの顔を見て、すぐお気づきになりましたか?

家入 皇后陛下はすぐにお分かりになったようでした。15年ぶりに熊本でお会いさせていただき、皇后陛下には「ご無事でようございました」と仰っていただきました。私などは、お世話をする役では家来の家来ですから、もう言葉も出ず、感極まりました。お帰りになる前に、皇后陛下が「ちょっと家入のほうに」という風に仰ったようで、天皇陛下は「ああ、そうね」というご様子でした。2度もお声をかけていただいたのです。

2016年5月19日、熊本地震による被災地をお見舞された天皇陛下。左は家入さん ©JMPA