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「必ず主演を取ろう」正月と誕生日に届くメール

――それで、去年主演が来たときの気持ちって覚えていますか。

山口 嘘でしょって(笑)。この世界に入ったなら、誰もが目指す場所であると思いますし、私にとってもそれが一つの目標であり、夢でした。だけど、叶わない夢を持ち続けるのってしんどい。だから頭が勝手に忘れよう忘れようとするのかな。なかったことにしようとして、いつのまにか本当に忘れちゃう、みたいな。諦めの気持ちもあったとは思うんですけど、何だろう。目の前のことに精一杯で、大きな夢が抱けなくなる、そんな時期が訪れて。事務所を移籍することになり。

――それはいつ頃のことでしょう?

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山口 2003年かな。自分ですら可能性というものを一切信じられなくなっていたときに、今の事務所の社長が「いつかは主演を取ろう」「主演をめざして君をマネジメントするんだから、あなた自身もそのつもりでいてください」と。そこでもう一度、よし、主演を目標に頑張ろうと思い始めるんですけど。

 

――『ブラックスキャンダル』が2018年なので、そこから15年ありました。

山口 そうなんです。やっぱり時と共に忘れていくんです(笑)。ただ、うちの社長がすごいのは、こちらのやる気をなくさせないために、毎年、お正月のメールと誕生日のメールに、「必ず取りますよ」って。メッセージの最後に必ずそう書いてくれるんですよね。

――正月と、誕生日は2月14日ですよね。

山口 「私は信じています」と。まだそのタイミングじゃないだけで、必ずその時は来るからって。脇役でも果たして必要とされているのかどうか、自分を信じることもなかなか難しい状況なのに、私のことを信じて、味方でいてくれる人がすぐ傍にいるというのは、とても心強くて。お守りのようで。毎年、毎年、そうやってメッセージを送ってくださるんです。

 でもやっぱり10年も経てばそろそろ気づくでしょ。脇役の面白味を知り始めたこともあって、主演はもういいよ、無理だよって思うんですけど、諦めずに送ってくださるんですね。で、15年経って初めて主演を頂くわけなんですが、頂いたら頂いたで社長はあっさりしているんですよね。

――え、2人で泣いて喜んだりしなかったんですか。

山口 全然なくて。「ね」って、「頑張ってください」って。当然のように。だから、とても大きな喜びとして受け止められなかったというのが正直なところかもしれないです。ここからが勝負なんだ、って。嬉しかったのは、陰ながら応援してくださっていた社長なり、マネージャーなり、家族、皆さんに少しはご恩をお返しできるかもって。

 でも自分の喜びとして…なんて言ったらいいんだろうな。主演を獲った、だなんていう喜び方は一切できなくて。なぜこのタイミングで私なんだろうということだったり、はてなマークのほうがいっぱい浮かんできましたね。

 

#2に続く)
写真=榎本麻美/文藝春秋


#2  25年目で初主演 山口紗弥加「蜷川幸雄さんの『女優やめんなよ』が転機だった」
http://bunshun.jp/articles/-/10849
#3  “振り切った女優”山口紗弥加「佐野史郎さんは私の中に“冬彦”を見たのかも……」
http://bunshun.jp/articles/-/10850
に続く

INFORMATION

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毎週土曜日 23時40分~24時35分
(東海テレビ・フジテレビ系)

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