「よし、男女3人ずつで、沖縄旅行に行こう」
古き悪しき会社なので、女性社員は必ず飲み会のたびにお偉いさんの横に座らされ、お酌や「あーん」を強要されます。「何で残業代出ないんですか?」と無邪気に会長に質問した新入社員は顔を1万円札ではたかれた挙句「今までの分だよ!!!!!」とキレられ、次の日から行方不明となりました。足りないもんね、1万円じゃ。
おまけに私は会社の役員(会長の息子・既婚・妻は社員)から「よし、男女3人ずつで、沖縄旅行に行こう」と誘われ、「社員旅行ですか?」と聞くと「ううん、プライベート(笑)。みんなには内緒で(笑)。ちなみに部屋は3つ取るから(笑)」と言われたので丁重にお断りをした結果、次の日から嫌がらせが始まり、最終的には他の新入社員の何倍もの仕事量を負わされたのでありました。
そして私は、新卒で入った会社を5ヵ月で辞めました。言ってしまえばクソみたいな会社だったため、「これ以上いても何も得るものはない」と考えたわけです。
不当な扱いを受けていることに気づけなかった
そんな目に遭いつつも、最初、私を含めた新入社員たちは「不当な扱いを受けている」と思わなかったのです。
大学を卒業して、初めて経験する社会人生活。研修期間中に優しかった先輩や上司たちをすっかり信用して「いい人だ」と思い込み、いざ理不尽な目に遭わされたときも「先輩や上司が、私たちに悪意を持って接しているわけがない!」と思ってしまったためでした。今思い返せばまんまと洗脳されて「先輩バイアス」がかかった状態に陥っていたのですが、右も左も分からない新入社員にとっては、なかなかこのことに気が付けないんですよね……。
「うちの会社、やっぱりおかしいのか?」と気付き始めるのは、入社からしばらく経って、他の会社に入社した友人たちなど、外部の人間に「変だよ、それ」と指摘されたタイミングです。
私の場合は、会長の息子に「旅行に行こう」と誘われたタイミングで「もしかしてこれはヤバイのでは?」と気が付きました。しかし、すっかり洗脳されて相手をいい人だと思っていたこともあり、「いやでも、下心なんてなくて単純に仲良くなるためにグループ旅行に誘ってくれているだけなのかもしれない……。だとしたら、断ったらダメなのでは……?」と悩んでいたところを友人に「アホか! 立派なセクハラじゃ、この世間知らず!」と説教をされ、「あ、うん、やっぱそうだよね」と初めて正気に戻ったのでした。