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アニメーターの夢

 彼女の夢は、台本から全部自分で書いて、楽しい短編映画をつくることだ。

 それはまた、スタジオに働くアニメーターの誰もが持っている”小さな願い”なのだが「実現できない夢ではないし、あれこれ考えているだけでも楽しくなってしまう」そうだ。

 デッサン力、個性、そのうえに、ものの特徴をよく把握する能力――、これらの「アニメーターの条件」を身につけてはじめてこうした「夢」を持てるようになるわけだ。

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 彼女はとてもファンタジックで、ユニークなセンスをもっている、というのは、仲間たちが一致してみとめているところなのである。

奥山さんはファンタジックで美しい景色やかわいらしい動物を描くのが得意だった ©井上隆夫/文藝春秋

「アニメーターという仕事は、こまかい神経を要求されるし、女の人には向いていると思うんですが、どうしたことか絶対数が足りないんです」と、後に続く人が少ないのが彼女には”ちょっと残念なこと”だという。

七夕の結婚記念日

 去る7日、彼女は国際キリスト教大学で結婚式をあげたばかり、文字通りのホヤホヤだ。

 芝生の庭で、白いドレスに包まれた結婚式。七夕の結婚記念日。新婚旅行は、スケジュールなしの奥軽井沢行き、と、すべてが彼女らしい。

 御主人は、同じスタジオで原画をかいている小田部羊一さんで、目下女の子と鹿の絵を担当しているという。

 4ヵ月前、原画のスタッフたちが一夕催した折に、酔いっぷりの見事さにひかれて、というのが、彼女の告白する”決心した理由”である。

 スタジオの仲間たちが「結婚準備委員会」をつくって用意万端とりしきり、祝福してくれた。

 1週間して、新婚旅行から帰って来たら、二人はまた意地悪ギツネとやさしい女の子を描くためにファイトをもやして各々の机に向うだろう。