フジテレビ・チーフゼネラルプロデューサー片岡飛鳥氏のロングインタビュー第4回。今回も人気のテレビっ子ライター・てれびのスキマさんがじっくり聞きます。(全11回の4回目/#1、#2、#3、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11公開中)
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生放送なのにピリピリしていなかった『いいとも』
<フジテレビの若手スタッフには欠かすことのできない修業の場があった。それが『笑っていいとも!』だ。失敗の許されない生放送のバラエティ番組で経験を積むことが、作り手として大きな糧となっていく。1989年の10月にそのADとなった片岡飛鳥も例外ではなかった。>
『ひょうきん族』が入社して1年で終わって、『笑っていいとも!』に配属されるんですけど、当時フジテレビに入ったADはみな『いいとも』を経験しといたほうがいいと言われていました。やっぱりVTR収録ものだけじゃなくああいう生放送特有の緊張感も経験していないとディレクター候補生としては欠陥であると。ところが『いいとも』の現場には、実際はそういうピリピリした感じはないんです。タモリさんがあの柔らかいムードを持っているからだと思うんですけど、鉄火場の『ひょうきん族』(→#3)とは全然雰囲気が違いましたね。
僕の持論ですけどテレビって、この四角いフレームの中に全部映るんですよ。映画のフィルムの質感とは違う、シャープでクリアな画面には言外のいろいろなものが映る。いろいろなもの、というのは「本当のところ」みたいなこと。それがテレビの面白いところだし、ステキなところでもあるし、時に怖いところでもある。
この人たちは一見楽しそうにキャッキャやってるけど、本当はそんなに仲良くないのかも…みたいなことが透けて見えたり。逆に大ゲンカしているけど、とても信頼関係があるんだろうな、とか。見ている人にリアルが伝わってしまう。『いいとも』はそれがさらに編集されない形で放送されるから、どの時代にもあのスタジオアルタに漂っていた空気がすべて映っていたんだと思います。
だから最終回(2014年3月31日)だって全然状況の説明なんかないんだけど、エグいくらいお笑い界のリアルが映ってましたよね。面白いし、あの日に限ってはピリピリもしていた(笑)。あれがテレビ。さっきは説明が大事とも言いましたが(→#3)、実は言葉を超えちゃうんですよね。
(※『いいとも』最終回でのタモリとさんまのトーク中にハプニングで、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、爆笑問題、ナインティナインら全員が同じステージに登場。お笑い界の「惑星直列」と言われる歴史的事件となった)