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芸人は国内需要によってガラパゴス化した

マキタ 芸人の活躍は、テレビ不況時代だからこそ。あと、プロデューサーやディレクターといった制作者の側は、盛り上がりのフローチャートをすごく気にする。画面上の安定感だとか、ここにどういう人を配置すると、どういう結果が出て……といった方程式を作るときに、どうしても芸人が必要になってくる。

おぐら 芸人の側も、そういった需要に応えることで、ますますハイスペック化していくと。

マキタ 基本的に日本のお笑い芸人は輸出をしないから、国内需要の中だけで出回っていくことでガラパゴス化する。

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おぐら 渡辺直美のような海外進出は、かなりレアケースで。

 

マキタ うん。そうなると、言葉を基礎にしたコミュニケーションに頼った笑いに特化していく。それが最も効率的だから。そのぶん経済の歯車になりやすくて、結果的にエンターテイナーというよりビジネスマンになっちゃった。この事実は、芸人たち自身が一番痛感していると思う。

おぐら もはや時代の要請としては、芸人に作家性とか芸術性といったロマンチック成分は求められてないんですよね。

 

マキタ 求められていないどころか、許されていない感じ。左翼の人たちからは「日本の芸人は政治風刺をしない」とか言われるけど、それは単に需要がないからで。ビジネスとして儲かるならいくらだってやりますよ。マーケットさえあれば、芸人は何だってやるんだから。

おぐら マーケットとして成立していないところでは、思いっきり政治風刺のネタをやっている芸人もいますし。

マキタ 元「ザ・ニュースペーパー」の松元ヒロさんとか、素晴らしい風刺ネタの漫談をやっているけど、やっぱりサロン化しているんだよね。

#3に続く)
写真=文藝春秋/釜谷洋史

越境芸人 (Bros.books)

マキタスポーツ

東京ニュース通信社

2018年9月22日 発売