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富士通などのSIerの惨状を見ていると、太平洋戦争で負けた大日本帝国を思い出す

日本って何でこんなつらくて勝てない組織なの?

2019/04/11
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日本企業のテーマは「人材流出」

 かたや、データ資本主義と喧伝され、日本国内では安倍晋三総理の指揮の元で内閣官房が中心となりGAFAM対策、つまりは海外のプラットフォーム事業者へ日本がどう対抗するべきかという謎の準備会が立ち上がるようです。気持ちはわかるけどそんなので大丈夫なんですか佐野さん。なんかこう、関東平野にピストン輸送的にB29がお腹にたくさん爆弾抱えて飛来しているところに、みんなで額に鉢巻き絞めて竹槍選手権でも始めるつもりなのかと心配になります。

 何が起きているのかと言うと、先日特徴的な記事が出て少し炎上状態になりました。

GAFAに人材流出防げ NTTコムの新キャリアパス : NIKKEI STYLE
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO42715110Q9A320C1000000/

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 このインタビューに出ているNTTコミュニケーションズの山本恭子さん、名誉のために書くと界隈では悪く言う人の少ないまともな人物で、ややもすると旧弊的な組織をどうにか風通し良くしようと奮闘しているなかでの話だそうです。炎上させるやつって最低ですよね。ただ、開発の現場でラグビーボールが飛び交うようなネタにされてしまい、それを現役NTTコム社員がブログで否定、さらにその人物に対し社内の状況を克明に公表するのは如何なものかと物議を醸しておるわけです。もう少し界隈の皆さんのアナルを拡張工事したほうが良いようにも感じます。

 ここで語られる「GAFAに人材流出」というのは日本企業の大テーマです。人材が逼迫し、良い人を採用するコストを会社がどう負担するのか、いままで組織で頑張ってきた人たちと、外から引っ張ってくる優秀な人たちとの賃金格差を人事体系上、組織としてどう説得力のある形で埋めていくのかというのは重要な問題になっています。

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富士通で起こる「人材流出」のメカニズム

 富士通で言えば、誰もが口を揃えて言いますが若い人の給料はとても安く、優秀でもそうでなくてもたいして給料が変わらない時期が長くあります。しかし、若くても業界でそこそこ名前が売れるほど腕に自信のある人は、社外人脈もできてスカウトもかかり、高給が保証されるようになると、組織の目的もはっきりせず昇給も怪しい富士通には見切りをつけて、よりフレックスで、より明るい環境で、より風通しの良くて、より給料の高い外資系開発会社に簡単に移籍してしまいます。

 富士通が安く新卒を使って開発案件でこき使って有利に経営しようとしているはずが、単なる外資系の優秀な人材選抜システムになっていることになぜ気が付かないのか、不思議でなりません。戦力にならない奴に富士通などの日本企業がイチから社会人として教育し、その金看板でいろんな技術者コミュニティで名前を売る若者が自分からより良い環境を探して飛び立っていく、養分供給場所に成り下がっていることは知っておくべきです。

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 逆に、組織にしがみついても今回のように45歳で見切りをつけられる可能性のある富士通にいて展望が拓けるのか? 未来があるのか? と言われれば、組織的にはいくら後から「戦死」と揶揄されようとも他の道を探しておかしくない状況になり得ます。例えば30歳で結婚して、32歳で子どもができて、45歳と言ったら中学生になるタイミングで会社から放り出されるかもしれないという危機感をもっていかなければいけないわけですよ。それなら、富士通ほど安定していないかもしれないけど、デスマーチのない給料の良いところで干されないだけの技術力を磨こう、と考える若者が出てもおかしくありません。

「大手企業に勤めている会社員」という先のない肩書よりも、どこにでも通用する技術を持ち、いろんなところからお声がかかるフリーランスの技術者であるほうが、収入面でも環境面でも有利になってしまう時代が到来しているとも言えます。もちろん、いま景気が良いから大企業よりもベンチャーや外資系のほうが働きやすいというのはあるかもしれません。ただ、この景気の良い状況なのに45歳以上は配置転換を強いる大企業が、次の景気悪化のときにベンチャーや外資系よりも多くの社員を抱えていられるという保証も無くなっているのです。