昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

「解説上手なニューヒーロー」高見泰地叡王は防衛へ逆転できるか?

将棋棋士・遠山雄亮の眼

2019/04/13

 これは高見泰地叡王が「きょうの叡王」という期間限定企画でTwitterに投稿したものの一つだ。現役タイトルホルダーが日常を記し、時々の赤裸々な心情を吐露するもので人気を博した。 

25歳と思えぬ日本語の美しさ

 高見叡王のツイートには、25という年齢を思わせぬ日本語の美しさを感じる。番外編含めて計170回。応援するファンを楽しませた。

 高見叡王はプロ入りをかける過酷な三段リーグをわずか3期、18歳で卒業した。10代でのプロ入りでエリート棋士への切符をつかんだと言える。

 筆者は高見叡王がプロ入りしてまもなくの頃に対戦し、千日手(引き分け)をはさんで深夜3時を過ぎる激闘の末に敗れた。そしてそれが一つの縁となり、練習対局を行うようになった。

 練習対局を重ねる中で、筆者は他の人にない高見叡王の将棋の特徴に気がついた。玉を固く囲う形を好むのだが、固さに任せて強引に攻め込むのではなく、盤面全体を使ってこちらの駒を抑えこんでくるのだ。いまになって、強い将棋AIの指し方とどこか似ていると気がついた。

 いつの時代にも別人に見えない未来をイメージしている人がいる。まさに高見叡王はその人だったのだ。

盤面を制圧する指し方で初タイトル

 そして2018年春、タイトル戦に昇格して初めての開催となった第3期叡王戦で大ブレークを果たす。予選を抜けた高見叡王は本戦で順に、豊島将之二冠、渡辺明二冠、丸山忠久九段とトップ棋士をなぎ倒して決勝七番勝負へ進出した。

 渡辺(明)二冠との対局は高見叡王の横歩取り(※1)で始まり、成桂(※2)で盤面を制圧して圧倒した。本来横歩取りは大駒飛び交う激しい展開に進むのだが、高見叡王が指すと盤面を制圧する指し方に変化する。高見叡王の将棋の特徴がよく現れた一局だった。

 決勝七番勝負は金井恒太六段との対戦だった。内容的には金井六段が押していたが、高見叡王は苦しい場面で類まれな終盤力を見せた。どんな不利になっても諦めない姿はタイトル獲得への迫力を感じさせた。

 そして高見叡王は結果的に4連勝で七番勝負を制してタイトルを獲得した。24歳の春だった。

(※1 横歩取り=序盤から相手の歩を取り合い、囲いも作らず激しく戦う戦法のこと)
(※2 成桂=敵陣に成りこんだ桂のこと)

昨年の叡王戦七番勝負で4連勝し初タイトルを獲得した高見叡王 ©共同通信社