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 タイトルを獲得すると将棋界の顔としての活動を求められ、日常が激変する。いいこともあるが、心を削られることもあるだろう。心が削られると成績に現れるものだ。筆者も3月末までモバイル編集長という肩書きで運営に携わっていたが、そちらで気を取られた時期は将棋に影響が出ていたものだ。

 高見叡王もその例に漏れず、タイトル獲得直後から苦しみ続けた。上記ツイートはとある対局に敗れた夜のものだ。

 さらにこの直後に筆者と対局したのだが、この対戦は高見叡王の良さが全く見られず、らしくない内容に心の疲労を感じたものだった。この敗戦でタイトル獲得から5勝6敗と負け越しに転じてしまったが、ここから防衛戦となる七番勝負開幕まで9勝2敗と見事な立ち直りを見せた。

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1学年上の永瀬七段相手に立て直しできるか

 第4期叡王戦七番勝負の挑戦者には1学年上の永瀬七段が名乗りをあげた。いまの永瀬七段はいつタイトルを取ってもおかしくない実力の持ち主だ。最強の挑戦者を迎えたと言っても過言ではない。

 第1局は4月6日(土)に行われ、永瀬七段が逆転勝ちした。高見叡王としては築いた優位をフイにする痛恨の逆転負けだった。だが、高見叡王は間違いなくこの敗戦を糧に立て直してくるはずだ。

 苦しいときに助けになるのは「言葉」である。将棋についても、精神状態についても、言葉で表すことができれば修正は早い。そのためには普段から考えを言語化している必要がある。美しい言葉を持つ高見叡王にとってそれは得意分野であろう。

 また苦しいときにファンの応援ほどありがたいものはない。高見叡王のツイートにはいつも温かいリプライがついていた。高見叡王の言葉の美しさ、ファンを思う気持ち、それにファンが応えてきた。今度はその声援が支えになる番であろう。

 第2局は4月13日(土)に行われる。連敗となると防衛に向けて黄信号が灯る。シリーズの行方を左右する一番となるはずだ。

 この春より、高見叡王はNHK将棋フォーカスの棋士MCに起用された。NHKの将棋番組は世間一般を相手とする。将棋を語る言葉美しき高見叡王にピッタリだ。この文章を読んで、将棋を、そして高見叡王をより知りたいと思われた方は、その話しぶりをぜひテレビでご覧いただきたい。

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