突然、母親や友人の人格が憑依したかのような謎めいた言動を始めたキム・ジヨン。診察した精神科医のカルテという形で、韓国の近現代に女性が受けてきた社会的抑圧を克明に描き出し、100万部を超す大ベストセラーとなった小説が翻訳され、日本でもヒット中だ。
「数年前まで、海外文学は欧米のもの中心でしたが、最近は様変わりしています。2011年クオンから、その後晶文社からも韓国文学のシリーズが刊行されたりして、韓国文学は書店や書評でも目立つようになり、今、日本では韓国文学がブームとなっています。さらに韓国では本書はK-POPアイドルが読んでいたり、映画化が決定されたりして、それらのファンからも注目されていました。さまざまな入り口から、多くの方に手にとっていただけたのだと思います」(担当編集者の井口かおりさん)
日本でも女性差別は根強い。そうした現状に対する怒りも、人気を支える。
「医大受験での女性差別が発覚したり、各界でのセクハラ問題がニュースとなる状況が日本にもあり、フェミニズムに関する書籍も盛り上がりを見せています。そうした中、女性を中心とした読者の共感が大きな波を生んでいます。自分が受けた差別の体験や、平等への願いを語りたくなる、訳者の斎藤真理子さんの言葉を借りれば、“呼び水”のような本です」(井口さん)
2018年12月発売。初版4000部。現在9刷13万部