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いじめ問題によせて ~「爆笑問題といじめ問題」全文公開~

『藝人春秋』(水道橋博士 著)

2012/08/03
note

「お前ら将来伸びるから、今、死んじゃダメ!」(ピエール瀧)
「ブハハハハッ!!」(伊集院光)

 最後に、ここ最近のいじめ問題に関する議論の中で、若い人たちに一番聴いて欲しいと思った発言がある。

 それは11月12日に放送された、TBSラジオ『伊集院光 日曜日の秘密基地』──。

 ゲストのピエール瀧が、デタラメで無責任な瀧らしい放言をすると、絶妙のさじ加減で軌道修正する伊集院、といった感のフリートークが続いた後、瀧が学生時代にショックだった事件の体験談をし始めた。

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 長くなるので、最初は要約して引用する。

 瀧が静岡の高校に通っていた頃、文化祭の打ち上げで飲酒をして、それが学校に発覚したことがあった。

 クラスのみんなが参加していたのに、先生によって、瀧だけが呼び出され首謀者に仕立て上げられる。

 瀧がその事実をクラスメートに伝えると、皆は「それは違う! お前が悪いんじゃないよ」とか、「先生に何か言われたら、庇ってやるよ!」などと温かい言葉をかけてくれて、瀧は「あー、友達っていいなぁ」と思った。

 いざホームルームになって、先生は、

「今から瀧くんがみんなにお詫びすることがあるそうです」と謝罪を強制。

 みんなが助け舟を出してくれると思っていた瀧だったが、クラスメートは無言のまま!!

 あの時は、クラスのみんなを憎んで、翌年の文化祭のフォークダンスをぶち壊しにしたりしたけど、後に『電気グルーヴ』を組むことになる石野卓球など、クラスの外にも友達がいて、自分の世界があったから救われた。

 まあ、現在の39歳(瀧と伊集院も1967年生まれの同じ年)にもなれば、あの頃、最低であることこそがいい想い出──などと振り返った話の流れから、突然、伊集院と瀧が爆笑しながら……。

 今さ、巷で昨今のいじめ問題とかあるじゃないですか? いじめるヤツ、いじめられるヤツ、あのね、そいつらに言いたい。お前ら将来伸びるから、今、死んじゃダメ!(爆笑)

伊集院 (笑いながら)ホントに青臭いことじゃなくて、その一瞬、お前ら敵に囲まれたと思うけどその外側にもっと凄い色んなことあるから!(爆笑)

 今、受けたそのひどい体験は、今のお前にとっては受け入れがたいかもしれないが、お前その経験をしとくと、将来伸びるから!!(爆笑)

伊集院 ブハハハハッ!!

 今死ぬな!! 伸びるから!! って感じ(爆笑)。

伊集院 お前ら、びっくりするだろうけど、今、お前の周りにいる30人全員敵だろ? だけど、その周りに300人いて、その周りの3000人が全員敵になる瞬間があって、30000人が急に味方するときがあるから。その一層(30人)だけで判断するなよ……。

 (笑いながら)判断するなってことを言いたいオレは! フハハハハッ!!

 この放送、最近のいじめ問題を語る言霊の中で一番、しっくりきた。

 いじめ問題を爆笑問題として最もすっきり説いたのはこの二人だった。

 今回、なんだか支離滅裂な文章を未整理のまま、だらだらと書きつらねたが、結局は最後のラジオの言葉の引用をしたかっただけだ。

 決して本にはならないような会話だけど、伊集院と瀧の話が、今、この文章を読むどこかの誰かに届けばいいのだ。

 あの頃のボクに、ラジオからビートたけしの言葉が届いたように。

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