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「『両取りヘップバーン』はそんなに好きじゃなくて……」あの将棋オヤジギャグはこうして生まれた

「『両取りヘップバーン』はそんなに好きじゃなくて……」あの将棋オヤジギャグはこうして生まれた

――豊川孝弘七段インタビュー #1

2019/04/26
note

ご自身が一番気に入っているオヤジギャグは?

――解説はお好きなんですか?

豊川 講座ものは苦手なんですが、実況解説をするのは大好きですよ。

――解説の心得やコツなどあれば教えてください。

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豊川 石原元都知事が記者から難しい質問をされたとき「君はどう思うんだ!」って聞き返すって話を教えてもらったんですよ。これは解説に使えるなと思いまして、手が見えない状況で解説を求められたら「里見(香奈)プロ、どうですか?」と逆に質問することにしていますね。「手が見えないときは聞き手に聞け」と(笑)。でもこうやってバラしちゃって、バレたん星人ですけどね。

――『豊川孝弘の将棋オヤジギャグ大全集』(主婦の友社)という本にも、たくさん紹介されていますが、このなかで好きなギャグといえばどれですか?

豊川 僕はあまり好きじゃないですが、みなさんは「両取りヘップバーン」が好きみたいですね。

――ご自身は、あまりお好きじゃない?

豊川 あんまり語感というか、響きがよくないというか……。

――ではご自身が気に入っているのは?

豊川 「ジョーズニ攻めてクルーニー」とか(笑)。語感もいいし「上手に来る」という言葉もいいですしね。

外国人名シリーズは豊川七段の鉄板ネタ

先輩棋士から「豊川くん、どんどん使ってくれ」

――ぶつかった駒を飛車で取るときの「同飛車大学」もみんな好きですよね。

豊川 これはね、昔から先輩も言ってましたね。「キリマンジャロ」なんかも米長先生(邦雄永世棋聖)の師匠の佐瀬勇次名誉九段が感想戦で言ってましたからね。「これ、飛車キリマンジャロだにぃ」みたいな感じで(笑)。

――将棋オヤジギャグには、昔から広く使われているものもあるんですね。

豊川 「間に淡路」(まにあわじ。攻めが間に合わないこと)は、囲碁の棋士から教えてもらったんですよ。囲碁に淡路修三先生という人がいるのですが、将棋にも淡路仁茂九段がいるから使えるなって思って。「こんな攻めじゃ、間に淡路~」って(笑)。でも、先輩なのでちょっと遠慮してたんですが、淡路先生が直々に「豊川くん、どんどん使ってくれ」って言ってくださったので今では積極的に使っています(笑)。

「青野トルイチ」も、最初は青野さん(照市九段)も嫌がっていたと思うんですが、そのうち慣れっこになったのか、ご自身でも使っておられますね。

――そういえば羽生九段も「この駒は取りにくい」ということを「トリニータ」ってオヤジギャグにしていたという話を記事で読みました。

豊川 そうなんですか……。オヤジギャグは前頭葉の衰えの結果だと言われていますから、羽生はもう復活できないかもしれないね(笑)。

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「青野トルイチ」とは、「取る一手」(駒を取る以外の手が考えられない)という将棋用語に、青野照市九段の名前を重ねたオヤジギャグ。豊川七段のギャグは、このように将棋用語と、棋士の名前で構成されたものも多く、将棋や将棋界を軽く知る入口のような役割も果たしている。

(#2へ続く)

写真=白澤正/文藝春秋

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