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従来の設備を有効活用「積替えステーション」

――昨年取材させてもらった隅田川駅でも感じたのですが(「JR貨物『隅田川駅』のいま」=『平成の東京12の貌』文春新書収載)、貨物駅の多様化が急速に進んでいるように思います。

 真貝 (前編で触れた)東京レールゲートのように新しい設備を作るだけでなく、従来からある設備の有効活用にも力を入れていきます。たとえば、従来は出荷元の工場なり倉庫なりで荷物をコンテナ詰めし、そのコンテナを貨物駅まで運んできてもらっていました。これだと駅での積み替え作業は簡単ですが、そこまでの道路輸送には「緊締車」というコンテナ輸送専門の車輛が必要になります。

 そこで、貨物駅構内に、線路に面し、積替えスペースを用意し、そこでコンテナ詰めを行うサービス、社内では「積替えステーション」と言っておりますが、を開始しました。貨物駅までは普通のトラックで荷物を運べるので、顧客の利便性は高まります。この方法で、アサヒビールさんの商品を隅田川駅でコンテナ詰めして新潟行きの貨物列車で発送するサービスを始めました。このサービスは非常に高いニーズを感じています。

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©文藝春秋

帰りに荷物がない「空荷」を解消した「ビール列車」

――ビールと言えば、「ビール列車」もJR貨物の収益増に貢献したそうですね。

 真貝 これは、大阪から金沢までアサヒビールとキリンビールの同業種間での共同輸送の貨物列車です。

 旅客と貨物の最大の違いは、旅客は「行けば帰る」という「往復」が基本なのに対して、貨物は「行ったきり」、つまり「片道」という点。つまり、何かを運ぶと帰りは荷物がないと「空荷」で戻さなければならないのです。もちろん帰りの列車も利用してもらえるように営業は努力するということですが。

「ビール列車」の出発式(JR貨物提供)

 そんな中で「ビール列車」は当社にとっても顧客にとってもメリットとなる事例と言えます。大阪の吹田貨物ターミナルと金沢貨物ターミナルを結ぶ貨物列車があり、金沢から大阪に向かう列車は清涼飲料水や紙製品などを運ぶ需要があるのですが、大阪から金沢に行く列車は「空荷」の比率が高かった。

 そんな折にビール2社から「名古屋から金沢へ貨物列車で運びたい」という話があったのです。残念ながら名古屋から金沢に向かう貨物列車はニーズが高くて余裕がない。そこで「大阪からの列車なら空きがあるのですが……」と話したところ、金沢向けのビールの生産拠点を名古屋から大阪圏に移して、この列車を利用してくれることになったのです。