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「積替えステーション」に「ビール列車」……鉄道貨物輸送の「埋もれたニーズ」とは?

JR貨物・真貝康一社長インタビュー #2

2019/04/24
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「埋もれたニーズ」を掘り起こし続ける

――貨物列車で運ぶために生産拠点を移すとは大胆な決断ですね。

 真貝 それだけトラックドライバー不足が深刻だということです。ただ、従来は空荷だったところにビール2社の商品が載るわけですから、こちらとしても比較的安くすることができます。顧客は輸送費を抑えてエコにも貢献できる。ちなみにこの取り組みによって、ビール2社は年間トラック1万台相当の輸送量をトラックから鉄道に切り替え、2700トンの二酸化炭素排出量削減を実現しました。結果としてお客様と当社の双方にメリットが生じたわけです。

©文藝春秋

――「線路があるところしか走れない」という制約がある鉄道貨物も、発想を変えることで、環境に配慮した効率的な輸送のために柔軟な対応ができることを、ビール列車は証明したことになります。

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 真貝 今回はビール会社による同業種間の共同輸送でしたが、他の業種でも複数の企業が手を組むことで効率的な輸送をしようという動きが出てきています。まとまったロットがあれば従来は通過していた駅に停車させることも、運休している土・日の列車を復活運転することも可能です。また、これまでA駅とB駅とを往復していた列車を、A駅→B駅→C駅→A駅と、三角形の運行形態にすることで「空荷」を減らす努力もしています。

 鉄道貨物のことをあまりご存じのない荷主さんに、利便性と効率性、そしてエコの面での優位性を知ってもらい、的確なソリューションを提供し、「埋もれたニーズ」を掘り起こしていく努力がさらに必要だと考えています。

©文藝春秋

■真貝康一(しんがい・こういち)

 1955年生まれ。78年東大法学部卒業。同年日本興業銀行入行。みずほコーポレート銀行資本市場部長、証券部長などを経て、2007年日本貨物鉄道(JR貨物)事業開発本部グループ戦略部担当部長。常務執行役員東北支社長、取締役兼常務執行役員事業開発本部長などを経て2018年代表取締役社長兼社長執行役員。趣味はヴァイオリン演奏、テニス、水泳、スキーなど。「JR貨物テニス部」元部長(社長就任後は顧問)。

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