安倍晋三首相の側近中の側近、萩生田光一自民党幹事長代行の数々の発言が波紋を広げている。一体どのような思惑があるのだろうか? その反響とともに、あらためて振り返ってみたい。
萩生田光一 自民党幹事長代行
「6月の日銀短観で、この先は危ないと見えてきたら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかない。違う展開はある」
共同通信 4月18日
4月18日、自民党の萩生田光一幹事長代行がインターネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)に出演し、10月に予定されている10%への消費税増税を先送りする可能性を示唆した。増税先送りは「まだ間に合う」と指摘した上で「その場合は国民の信を問うことになる」と明言。衆参ダブル選挙の実施に含みを持たせた。
総裁特別補佐、官房副長官などを歴任している萩生田氏は、安倍晋三首相の側近中の側近。落選中には安倍首相の腹心の友、加計孝太郎氏率いる加計学園グループの千葉科学大学危機管理学部で名誉客員教授も務めていたほど。
萩生田氏は「今まで(消費税増税を)『やります』と言い続けた前提は、景気が回復傾向にあったから。ここへきて、ちょっと落ちていますよね。せっかく景気回復をここまでしてきて、腰折れして、またやり直しになったら、何のための増税かということになってしまう」と、景気が「落ちている」のをあっさり認めて上記の発言へと続いた(プレジデントオンライン 4月19日)。アベノミクスの破綻を自ら認めた格好だ。
政権幹部たちは慌てて否定
与野党は萩生田氏の発言を「安倍首相の意向を忖度しての観測気球」と受け止めた(東洋経済オンライン 4月19日)。これまで安倍首相は2回の増税延期を国政選挙の直前に表明し、いずれも圧勝してきたからだ。夏の参院選に向けて自民党内の危機感が高まっている中、3度目の増税延期から衆参ダブル選挙へなだれ込むというシナリオが浮上している。立憲民主党の福山哲郎幹事長はツイッターで「増税延期は私たちがかねてから主張しており、当然だ」とした上で「われわれとしては、解散を堂々と受けて立つ用意がある」と発言した(4月18日)。
一方、菅義偉官房長官は18日の記者会見で萩生田氏の発言をすぐさま完全否定。「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、10月に引き上げる予定だ」とあらためて強調した(読売新聞オンライン 4月19日)。世耕弘成経産相も「リーマンショック級のことが起きないかぎりは、法律に定められているとおり、10月1日から上げていくということだ」と打ち消している(TBS NEWS 4月19日)。麻生太郎財務相は「(増税準備に取り組んでいる)企業は迷惑している」と述べ、「日銀短観という言葉を知っていたか」と経済政策に携わった経験が少ない萩生田氏を皮肉った(時事ドットコムニュース 4月19日)。