1ページ目から読む
5/5ページ目

皇后陛下の立ち居ふるまいの美しさを感じてほしい

 今上天皇、皇后両陛下は、スケジュールが許す限りこの「ご会釈」を最優先してくださっていた。平成27(2015)年にお出かけになられたパラオ・ペリリュー島慰霊の旅は、ご帰国後4~5週間経っても「その時の緊張がまだ解けない」と皇后陛下がおっしゃったほど張り詰めた旅だった。海上保安庁の巡視船「あきつしま」にご宿泊され、ご高齢であることを考えても、相当なお疲れだったはずだが、ご帰国翌日のご会釈にはお出ましになられた。

 勤労奉仕団をお世話してくれた八木さんが「真似はできないにしても、皇后陛下の所作や立ち居ふるまいの美しさを(世の中の女性に)感じてほしい」と言ったことがあった。今上天皇はもちろん、美智子さまのオーラに魅了されて参加したご婦人も多かったという勤労奉仕団。御代替わり以降の参加者の顔ぶれも気になるところだ。

「天皇皇后両陛下からです」

 最終日には先に書いた「皇居勤労奉仕記念」と記された記念写真とともに、「天皇皇后両陛下からです」と、「皇室」というタイトルの写真集と、菊の紋章が入った紅白の和三盆を賜った。「一生食べずに取っておく」と言う人もいたが、その気持ちもよくわかる。

ADVERTISEMENT

参加者に配られる写真集 ©文藝春秋
記念のスタンプ ©文藝春秋

 ボランティアといえば、記憶に新しいのが、「やりがい搾取」「ブラックボランティア」と話題を集めた東京2020大会のボランティアだろう。

 そもそもボランティアは、自発的に裏づけられた奉仕者、篤志家を意味し、必ずしも「無償」である必要はない。近年では、災害時などに活躍する人たちによって、ひろく一般にその概念が広がったとはいえ、日本ではまだボランティアは「自発的に行う奉仕活動」というよりも「無償で行う善行」というイメージが強い。しかし、皇居勤労奉仕に限っては、抽選となるほど多くの申込みがあり、地方から交通費や宿泊費を自己負担しての参加者も少なくないという。完全に正しい「ボランティア」のあるべき姿がここにある。