むろん『ゴジラ』第1作目からすでに恋愛要素は盛り込まれていたが、本作ラストの二人の別離はその比ではない。何しろ金星人に覚醒してからの記憶がいっさいない中で、進藤のことだけは覚えているというのだからサルノ王女の想いはひとしおだ。“命がけで”守り守られる関係性もある意味、オリジナルの新聞記者と王女以上だろう。本多監督も「本当はベッドシーンまで行きたかった」と述懐されており、二人の愛の本気度が窺(うかが)える。日本のSF怪獣映画でここまで明白に男女の恋愛が描かれたのもこの映画が初だった。
そして、この情報に関しては黎明期のテレビ番組に詳しい識者の方のご指摘を仰ぎたいところだが、ひょっとして!?……という元祖。劇中のテレビ番組『あの人は今どうしてるでしょう?』に、なんと! 小美人が出演。そのために来日した彼女らがキングギドラ襲来の世紀の大事件に遭遇。モスラを呼び、ゴジラとラドンに協力を仰ぐ……という展開になっているわけだが、その伏線のための劇中劇が『あの人は……』。おそらく当時すでにラジオやテレビ番組にあった同様の特集から脚本家の関沢新一がインスパイアされたものと思われるが、少なくとも「あの人は今」企画が邦画に登場するのはこれが初。
実際に同名のテレビ番組『あの人は今!?』が放送されたのは日本テレビ系で’95年のことで、今もTBS系の『爆報! THEフライデー』などに継承されているが、じつは『ゴジラ』映画の発明だった!?
以上のように、ジャンルを問わずあらゆるエンタメの源泉であるこの『三大怪獣』が、新元号・令和の世に、戦後の邦画界が追いつけ追い越せとばかりに目指していたハリウッドで大作映画化される事実が、何よりも邦画が人類全体に評価されたことに他ならない。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は冒頭に記した、偉大なる先達たちの努力と実績が世界的に認められたことの証であり、結晶である。……そんなこともちらっと脳裏によぎらせながらこの新作を鑑賞していただければ幸いである。