つまりそれはゴジラの“キャラ変”を意味した。それまで常に自身が“ヒール”として新怪獣、または話題の対戦相手と戦ってきたゴジラが初めて他の怪獣と手を取り、宇宙からの外敵を倒すために起ち上がった映画が本作。この作品から昭和50(’75)年公開のシリーズ第15作『メカゴジラの逆襲』までゴジラは地球と人類のために戦う“正義の大怪獣”としてのキャラ付けを与えられることになる。
ヒールだった主人公が強大な敵を前に仲間と一致団結して立ち向かうスタイルは後の『ターミネーター』(’84年~)や『エイリアン』(’79年~)、『プレデター』(’87年~)を筆頭に映画及びエンタメ作品の定番と化すが、じつはその始祖こそがこの『三大怪獣』だった。確かにそれ以前にも時代劇映画等で映画スターが豪華競演する“オールスター映画”というジャンルはあったが、あくまでも演じる俳優を立ててのこと。いわゆる“ピンを張る力を持つ架空のキャラクター”でそれを実践したのはやはりこの『三大怪獣』が初だろう。後の『マジンガーZ対デビルマン』(’73年)やスーパー戦隊VSシリーズ、さらには今現在の映画(原作コミック自体は『三大怪獣』の前年、'63
じつはあらゆる日本のエンタメ作品の“元祖”である
じつは『三大怪獣』は、オカルト = 超常現象・超能力を真正面から扱った日本映画の元祖だ。自称金星人の生まれ代わりを騙る神秘的な美女、その正体は政情不安によりセルジナ公国から一時亡命したサルノ王女(映画『007(ダブル・オー・セブン)』シリーズのボンドガールも務めた美人女優・若林映子が好演)――が登場するが、彼女は予知能力に長けたエスパー(当時はこの言葉も普及していないので劇中では“預言者”と呼称)。
5000年前に宇宙超怪獣キングギドラによって滅ぼされた金星文明の王女の転生で、その霊魂が覚醒して能力が使えるようになったという設定。日本映画にここまで具体的に超自然現象 = オカルト設定が登場し、明確に預言者・超能力者が描かれるのは史上初のことだった。