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 戦前~戦後直後の邦画にも術者としての忍者・忍術使いや、神通力という名目で超常能力を発揮する僧侶や巫女、シャーマンは登場したし、“三大怪獣”の1体であるモスラのデビュー作『モスラ』(’61年)ですでにモスラを呼ぶシャーマン・小美人(ザ・ピーナッツ)が“テレパシー”を使用しているが、あくまでも“ファンタジーな存在”であり、メジャー映画の中で人間が、超心理学でいうところの“超能力者”として本格的に描かれたのはこれが初。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』2019年5月31日(金)全国東宝系にて世界同時公開 ©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

 その証拠に、我が国屈指のSF作家・平井和正とSF漫画家(でもある)石ノ森章太郎がタッグを組んだ、日本初の本格超能力バトル・コミック『幻魔大戦』(’67年)も明確に『三大怪獣』の影響を受けている。特に石ノ森は、藤子・F・不二雄、藤子不二雄(A)らと動画・漫画制作会社のスタジオ・ゼロを立ち上げた際にも、東宝から『ゴジラ』(’54年)や『空の大怪獣ラドン』(’56年)、『モスラ』等のフィルムを借り、特撮(怪獣が暴れる)シーンばかりを集めて再編集する番組企画をテレビ局に提案したほどの東宝怪獣・特撮映画ファンの、筋金入り。とどのつまり『三大怪獣』は『バビル2世』(’71年)や『ねらわれた学園』(’81年)などの超能力SFの元祖でもあるわけだ。

名作『ローマの休日』(’53年)のSF怪獣映画版

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 後年、本多猪四郎監督が明言しているように、本作はオードリー・ヘプバーン主演の名作『ローマの休日』の怪獣映画版を狙って脚本が練られた。夏木陽介演じる主人公の刑事・進藤とサルノ王女の関係性やドラマ展開は明らかに『ローマの休日』の新聞記者ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)とアン王女のラブ・ストーリーを意識している。