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通電、監禁、肉体関係……連続殺人犯はこうして女性を洗脳して“獲物”に仕立て上げた

ケース2・松永太 北九州監禁連続殺人事件#2

2019/06/01
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 2人が逮捕された日、清美さんが監禁されていた篠崎マンションと数々の殺人が実行された三萩野マンションとは別の、泉台マンション(仮名・北九州市小倉北区)で4人の男児が保護された。

 そのうち当時9歳と5歳の男の子は、松永と純子の子供。そして6歳の双子の男の子は、松永が甘言を囁いて1999年に夫と別れさせた金子友里さん(仮名)の子供だった。

 友里さんに対し松永は「医者の田代」、純子は「“逃がし屋”で探偵の岡山」と名乗って接触。松永が結婚を申し込み、その気にさせていた。

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 そそのかされた彼女は、山口県で水商売の仕事に就き、子供を松永らに預けている。さらに、逃走費用、盗聴防止費用、事務所スタッフの人件費、子供の養育費などの名目で、約3300万円を渡していた。もし2人の犯行がいつまでも発覚しなかったら、友里さんと子供たちの運命はどうなっていたかわからない。

“医師”の松永との交際を薦める“看護師長”の純子

 さらに松永と純子は、友里さんを陥れる作業と並行して、新たな“獲物”を、方々で物色していたことも明らかになった。

 2001年夏ごろから松永と純子は、中年の女性を連れて、北九州市内のカラオケ店に週1回のペースで出没した。同店では松永が東大卒の医師、純子が看護師長だと偽り、中年女性は看護師だと紹介。当時19歳の女性店員を松永が狙ったのだ。

©iStock.com

 その女性店員・林めぐみさん(仮名)が彼らの犯行を知ったのは、松永と純子が逮捕されてからのこと。福岡県警の捜査員より連絡があり、押収物のなかに彼女の顔写真と住所を書いた紙があったと聞かされている。めぐみさんを直撃したところ、彼女は困惑の表情を浮かべた。

「写真を撮られたり、住所を教えた憶えはありません。ただ、店で松永は私を指名して、飲み物を持って部屋に行くと、いつもお酒を飲まされていました。それで『僕はめぐみさんのことが好きだから』と口にして、何度も飲みに誘われました」

 スーツ姿だった“医師”の松永との交際を、落ち着いた色のカーディガンを着て、いかにも“看護師長”の純子が遠まわしに薦めていた。

「緒方は、『先生はすごい人で、週に1回、大学でも教えている』と話していて、『付き合うとかはできんやろうけど、相手しちゃってね』と言われてました。もう1人の中年女性はいつも黙っていて、緒方は『あの子は無口だから』と話していました」

 松永はめぐみさんの同僚の男性店員にチップとして1万円を渡し、彼女の携帯番号を入手。何度か電話をかけて誘うなどしていた。結果的にめぐみさんが2人の毒牙にかかることはなかったが、さらに多くの被害者が生まれる可能性は十分にあった。また、同席した中年女性の素性は判明しなかったが、彼女自身がすでに“獲物”だったかもしれない。