昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

2019/05/21

「豊島?強いよね。(呼び捨て!?)」

『豊島?強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ』

 2012年4月22日に放送された第62回NHK杯将棋トーナメントで、対戦相手の豊島名人に対して佐藤紳哉六段(当時)が事前インタビューで語ったセリフだ。もちろんファンサービスの意味ではあったが、豊島名人のイメージとぴったりで、豊島名人について語られるときには7年経ってもこのセリフが登場する。

 今ではもう読めないのだが、豊島名人は将棋連盟ライブ中継アプリのコラムを、2012年5月に4回にわたって執筆した。第1回のコラムでこの対局を放送で見た心境を書いており、元モバイル編集長の筆者は当時のデータを持っているのでその一部を紹介しよう。

「佐藤紳哉さんがカツラを被って登場、戦前のインタビュー『豊島?(呼び捨て!?)強いよね。序盤中盤終盤隙がないよね。(なんか誉められてる…)でも俺、負けないよ。駒…(噛んだ!)駒たちが躍動する俺の将棋を見て欲しいね』で始まり、対局は私が勝った。」

 自分の思いを柔らかくも率直に伝えるところに豊島名人の性格が現れている。文章の面白さも相まってこのコラムは将棋ファンの間で話題となったものだ。

2007年に平成生まれの棋士としては初のプロに。そして今回平成生まれ初の名人になった豊島三冠。将棋界の“令和の覇者”となるか?

「藤井七段の全盛期に戦うことを目標にしている」

 また名人獲得直後の記者会見での「自分が描いていた名人と比べて、技術も人間的にも未熟だと思うので努力して成長していけたらと思います」という談話は、自分自身を冷静に見つめる豊島名人の素直さと柔軟性がよく出ていた。

 藤井(聡)七段について豊島名人は「(10年後に訪れるであろう)藤井(聡)七段の全盛期に戦うことを目標にしている」と語っている。三冠がそう評価する16歳も半端ではないが、その思いを率直に述べるところも豊島名人らしい。

 6月に渡辺明二冠を挑戦者として迎え撃つ棋聖戦五番勝負が開幕する。三冠vs二冠、将棋界の頂上決戦であり、令和の覇者争いとも言える戦いだ。

 この二人には将棋AIを使いこなす術に長けているという共通点がある。序盤から将棋AIを用いた研究がぶつかり合い、戦略性に富んだレベルの高い戦いとなるであろう。今から楽しみでならない。

 第1局は6月4日(火)に兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で行われる。

この記事の写真(3枚)