妄想という言葉の印象はネガティブなものだろう。だがときに、妄想のような直感的な思いつきが人を突き動かし、世界を変える。「月に行く」という途方もない目標が、ロケット技術を進歩させたように。ビジネスにおける妄想の重要性と、それを論理に落とし込み、使えるアイディアにするための様々な方法を紹介した書籍がヒット中だ。
「山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)もそうですが、論理や戦略を重視する左脳的なアプローチに対するアンチテーゼが求められる時代が来た印象があります」(担当編集者の藤田悠さん)
何もしない時間、白紙のノート……生活のなかに「余白」を設け、妄想を活性化する重要さは、ビジネスの局面だけに留まらない。
「著者は企業のイノベーション支援の専門家なのですが、そこで終わらないよう、執筆中によく話し合いました。この本で勧めているのは『デザイン思考型プロセス』です。言葉にする前にまずプロトタイプ(試作品)を作成してから、修正を重ねていく。箇条書きではなく、ビジュアルにまとめて考える。この方法は、組織だけではなく、個人のやりたいことを人生で実現していく際にも役立ちます。裏づけのある手法を具体的に示しつつ、〈自己啓発本をアップデートする〉というのが、一貫した裏テーマだったんです」(藤田さん)
2019年3月発売。初版6000部。現在5刷8万部