文春オンライン

2019/06/29

「希望の光」だったナイター照明

 1957年。原爆投下から12年が経過した広島ですが、市内の中心部や繁華街ですら、原爆の爪痕はまだまだ残っていました。そんな中、同年7月22日に開場したのが旧広島市民球場。突貫工事だったと言われてはいますが、中国地方で初めてナイター設備を設置したその球場は、ファンや市民にとっては最新鋭の球場。お婆ちゃんは「焼け野原だった広島に、周りの県にも無い素晴らしい球場ができた」と球場の前で拍手をし、涙を流して喜んだそうです。そして多くの方々が言うように、ナイター開催ゲームで天に向かって伸びるかのようなカクテル光線は「広島の復興と未来を信じさせてくれる光」に見え、仕事で近くに行くことが多かったお婆ちゃんは、観戦をせずにあえて遠くから眺めるのが大好きで、ただ幸せで、なにより「原爆で犠牲になられた天国の人たちに試合を届けるような美しい光に見えたんよ」と、嬉しそうに語ってくれました。

 もちろん、いまでも婆ちゃんはカープファン。帰省をすれば「昨日の試合は惜しかったね」とか「黒田さんがカープに帰ってくるんじゃね」と当たり前のように話します。昨年、丸がFAで巨人に移籍することが決まった時、自分が「地元のロッテならともかく巨人とか考えられん!」と嘆いたことがあったのですが、その時にも「まあ、そう言いんさんな。カープにはええ選手がいっぱいおるんじゃけえ、丸さんも応援してあげんちゃい」。つねに温かい目で見ているのです。カープファンの大先輩であると共に、正真正銘のカープ女子。こういう人たちがカープを支え、球団存続の危機を乗り越える力を与え、いまがある。爺ちゃん、婆ちゃんだけではなく、カープを広島に残してくれたすべての皆さまに心から感謝すると共に、生涯どんなことがあってもカープを愛し続けることをここに誓います。そして、天国のお爺ちゃん。ふたりの最高の物語を、孫からの気持ちとしてこの場所に残します。

カープファンの大先輩である婆ちゃん ©ガル憎

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