なかなか手をつながないおふたりが「手を触れ合わせた」瞬間

 平成最後の日に「退位礼正殿の儀」で、台座を降りられた上皇陛下が美智子さまの手を取られたことが話題になりました。おふたりは若い頃から手をつないだ写真がいくつも残っています。

 現在の両陛下が手をつないでいるところは、私は見たことがありません。おふたりの山登りに同行したとき、足場の悪いところで「ここなら手を差し出されるかも」と何度も狙いましたが、あいにく一枚も撮れませんでした。恥かしい、照れくさいというお気持ちがあるのでしょうか。人前で手をつなぐようなことはなされないのでしょう。

 唯一撮れたのは、飛行機のタラップをあがるときに陛下が雅子さまの腕に手を添えられた場面です。これは99年12月にベルギーのフィリップ皇太子の結婚式に参列して帰国されるときのワンシーンでした。帰国後すぐに朝日新聞が「雅子さま 懐妊の兆候」と一面トップで報じたのを見て、私はこの場面を思い出したものです。その後、雅子さまが稽留流産されたことを思うと、忘れられない一枚です。

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1999年、ベルギー訪問で雅子さまを優しく支える天皇陛下 ©河崎文雄

 仲睦まじいおふたりの様子を捉えたこともあります。同じ99年の2月に北海道でネイチャースキー(歩くスキー)を楽しまれたときのこと。転びそうになった雅子さまを、陛下が後ろから抱きかかえられたのです。周りに誰もいなかったこともあってか、とっさに雅子さまを助けられたのでしょう。ちょうど木々の間からおふたりが見えて、その瞬間に望遠レンズで捉えました。

1999年、歩くスキーで転びかけた雅子さまをとっさに助ける天皇陛下 ©文藝春秋

 おふたりが様々な困難を乗り越え、2001年に愛子さまがお生まれになったのは本当に喜ばしいことでした。愛子さまがまだ1歳になる前の02年8月、那須の沼原湿原で初めてご一家でハイキングをされたご一家は幸せそうな笑顔に包まれています。