2018年3月、朝日新聞朝刊に掲載された「妻が願った最期の『七日間』」と題された投書は、SNSで紹介されるやいなや、瞬く間に19万人の「いいね」を獲得した。71歳の男性が、がんで同年1月に他界した妻の遺した詩のことを書いたものだった。

 その詩「七日間」は、もしも神様からあと七日間の元気な時間をもらえたら、一日目は料理、二日目は手芸、三日目は身の回りの片付け、四日目は夫婦と愛犬でドライブ、五日目は子と孫の誕生会、六日目は女子会、七日目は夫婦2人で好きなCDをかけながら話したい、と続く。妻の願いは叶わなかった、詩の最後の場面、七日間ののち、《私はあなたに手を執られながら 静かに静かに時の来るのを待つわ》という部分を除いて。

「新聞で読んだ時、こんな、物語のような実話があるのだなあ、と感動しました」

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 シャンソン歌手・クミコさんはその時、いずれ自分がその詩を歌うことになろうとは想像もしなかった。同年11月、事務所に一通の手紙が届く。差出人は件(くだん)の投書の主、宮本英司さんだった。

クミコさん(左)。写真右は今回初めて組むプロデューサー・酒井政利氏。

「亡くなった奥様の容子さんは、私のシャンソン仲間と親しかったそうです。その方のブログに“小春ママ”と呼ばれてよく登場していました。小春ちゃんはご夫妻が飼われていた犬です。本当にびっくりしました。手紙には、奥様の詩を私に歌ってほしい、とありました」

 クミコさんは、戦後の広島で原爆症に苦しみながらも平和を願い鶴を折り続けて死んでいった少女を歌った「INORI~祈り~」で2010年に紅白歌合戦に出場、その後も「最後だとわかっていたなら」など、死と向き合う歌をうたってきた。