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草津町はじまって以来 異色のやり手町長

 今回、湯長廃止を打ち出した黒岩信忠町長(72歳)は「草津町はじまって以来の異色の町長」と評される。

 1947年に草津町内で生まれ、中学を出たのち18歳で電気工事業を立ち上げて独立。その後はさまざまな事業を展開して資産家として知られるようになり、35歳で町議会議員に立候補して当選。議員を7期つとめた後の2010年、満を持して町長選に当選。草津町では初めて、旅館業以外からの町長誕生となった。

 町長になってからは草津のシンボル湯畑を中心に再開発・再整備を断行し、反対の声をものともしない改革を進めていく。2017年には観光客が過去最高の325万人を記録。その活躍ぶりからテレビなどでも取り上げられる、剛腕のやり手町長だ。

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 まずはその黒岩町長に話を聞いた。

「よく誤解されるのですが、時間湯をやめるのではないですよ。時間湯は草津にとって大切な伝統文化です。そうではなくて、これまでは入浴するのに1回560円とっていたのを無料にして、より多くの人に利用していただこうというのが私の主張です。やめるのは湯長だけです。また湯長は湯治客の方に問診して、病気を治すようなことを言っている。これは違法な医療行為にあたります。突然、湯長廃止を言い出したように言われていますが、法令に違反する行為を知ったからには、町の最高責任者としてすぐに対処するのは当然のことなのです」

黒岩信忠町長

 黒岩町長によると、この法令違反の疑いの他にも、湯長制度には多数の問題点があるという。

「調べてみると、湯治客との間に入湯料として現金の授受があるのですが、この会計がかなり不透明なのです。まず入湯客の実数が、こちらの計算では年間7000人ほどなのですが、湯長側はのべ1万8000人が救いを求めて来ているなどと言っている。また湯長側はガソリン代が年間8万円ほどかかっていると計上しているのですが、湯長に町から車を貸与などしていないのにガソリン代を計上しているのは何なのか。それらを含め、時間湯には年間1000万円ほど町から支出していますが、長期の湯治客が通っている地蔵の湯の現在の利用者を調べてみると1日10人ほど。1日たった10人の入湯客のために、これだけの町の予算をかけるというのは常識として考えられないでしょう」

 町長の話を要約すると、現在の湯長制度の問題点は、大きく分けて2つあることになる。1つは湯長が医師法に触れる行為をしているということ。2つ目は、時間湯の維持費を湯長が私的流用している疑いがあることだ。

草津温泉街

 また黒岩町長と同じく「湯長制度廃止」を主張している町民に話を聞くと、次のように話した。

「今の時間湯はおかしいよ。男の湯長が教祖みたいになって、長期の湯治客を囲って自分のアパートに住まわせたりしているんだ。回覧板を回しても名前も記入しないし、入湯するときには客全員に神棚を拝ませたりと、なんだか新興宗教みたいなんだよ。女性客の裸をジロジロ見たり、患部を見せろといったセクハラもあったらしいし、湯治客とのトラブルも絶えないと聞いている。湯長が時間湯を私物化しているのが問題なんだ」

 つまり問題の根底には、湯長による「長年の時間湯の独占・私物化」があるという。これらがもともと根底としてあった上で、医師法違反と補助金私的流用の指摘につながっているように感じた。