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「草津人にあらずんば人にあらず」

 ちょうど町議会が始まっていたので、最終日の6月11日に傍聴してみた。15席ほどある傍聴席には時間湯の湯治客、湯長廃止を求める一部町民、中立派の町民と入り乱れて満席状態だった。

 12人いる町議会議員のうち、明確に湯長制度維持を主張している議員は1人だけ。進行役の町議会議長も、廃止反対派の議員の質問は途中で遮り、廃止賛成派の議員は発言し続けても止めないといった、やや偏った議会進行をしている。湯長派の人たちから見ればかなり恣意的な議会運営に見えるだろう。部外者から見ても「もう廃止は決定事項だ」という、町長と多くの町議たちの強い意志を感じた。

 閉会後、時間湯の湯治客の男性に話を聞くと「ここは中国なのかと驚きました。映画やドラマの世界だと思っていた世界が、令和の時代の日本で、いまだに議会室という公の場所で行われることに愕然としました」と落胆する。

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地蔵の湯。向かって左が初級者用の下段、右の上段が上級者用のより高温な浴槽

 また「湯長制度は続けるべきだ」とする町民はこう話す。

「湯長さん含め、時間湯を利用している人たちのほとんどは町外の人でしょう。草津では『草津人でなければ人にあらず』という言葉があるほど、閉鎖的な土地柄なんです。だから問題の本質は、単に町外から来て湯長になった人が時間湯を独占して偉そうにしている、ということに尽きるのではないかな。町長さんは年1回ある時間湯の懇親会(茶話会)にも出ていたし、もともと湯長さんとの関係は悪くなかった。しかし町長さんの取り巻きに一部の旅館関係者がいて、彼らが湯長はけしからんと長年にわたって吹き込んでいた。時間湯が開放されたら、自分たちの商売に利用する狙いもあるんだろう。そうした経緯があって、とくに湯長制度に関心があったわけではない町長さんも、次第に廃止へと傾いていったのではないかな」

 この町民の方は、話をするときも「ここではまずいので」と、人気のない場所に移ってからヒソヒソ声で話し始めたので、ちょっと驚かされた。

 

 今回の騒動の構図については朧気ながらわかってきたが、ここで置き去りになっているのは、一般の湯治客ではないだろうか。兵庫県から10年以上も時間湯に通っているという湯治客の女性はこう話す。

「町長さんは『湯長制度をなくすだけで時間湯は無料開放して続ける』と仰っていますが、やっぱり湯長さんあっての時間湯なんです。時間湯は高温ということもあって、入浴を指導してくれる湯長さんが必要ですし、湯長さんがいるから私たちも安心して入ることができるんです。私も多くの病院を回ったけど病状はひどくなる一方で、どうしようもなくなってたどり着いたのが草津の時間湯なんです。ですからこれが無くなるとしたら、重い慢性疾患を抱えている私たちは、これからどうすれば良いのでしょうか」

「地蔵の湯」の源泉である「地蔵源泉」