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草津温泉は、高温浴もやめて普通の温泉になるのか?

 また黒岩町長をはじめとする湯長制度反対派は「高温浴は効果がないから不要。だから指導する湯長もいらない」と主張している。確かに東洋医学的な療法である高温浴は、その効果についてエビデンス(医学的根拠)に乏しいため、専門家の間でも賛否が大きく分かれている。

 しかしその効果の是非はともかく、湯長を廃止して高温浴もやめるとなれば「42℃くらいの適温の温泉に3分間つかる」ということになるが、これでは日本のどこにでもある普通の温泉の入浴法であり、もはや「時間湯」と呼べなくなってしまうのではないだろうか。

「時間湯の入浴手順」

 この点を町長に訊ねると「今後についてはこれから様々な意見を聞いたうえで決めたいと思っていますが、高温浴の危険性については、群馬大学におられた久保田先生から今後も話を聞いていきます」と話す。「久保田先生」とは、かつて草津にあった群馬大学医学部附属病院・草津分院の分院長だった久保田一雄医師のことで、温泉医学の専門家の立場から時間湯の高温浴に反対している一人だ。

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 時間湯というのは高温浴だから、入浴指導をする人が必要となる。湯長というのはそのために、湯治客の中から自然発生して成立した歴史をもつ。そう考えれば高温浴と湯長というのは、時間湯にとって切っても切り離せない関係にあることがわかる。だから湯長を廃止するということは、高温浴をやめることにつながるのだろう。

 黒岩町長は「廃止するのは湯長だけで時間湯は残す」と話すが、百歩ゆずって「時間湯=湯長」ではないとしても、「時間湯=高温浴」であることは確かだから、やはり江戸時代末よりつづいた伝統文化・時間湯そのものが形骸化する懸念がある。

絵葉書に残る「時間湯」の様子

 今のところ湯長廃止は既定路線であり、剛腕で知られる黒岩町長がそれを撤回する可能性はほとんどないと言われている。廃止まであと9か月ほど。草津温泉はいま、150年の湯長文化が消滅するか否かの瀬戸際にある。ただ、難病を抱える湯治客が置き去りになる決着だけは、何としても避けてほしいものだ。

すぐ近くにある源泉から新鮮な湯を流し入れている

写真=松山陽子、上原善広