離れて住む親が病気がちで心配――多くの場合、人はいつか「親との同居」という選択肢を考える時がやってきます。同居の“適齢期”はいつ? おカネの問題は? 専門家の方々に皆が幸せになる同居術を伺いました。
『文春ムック 令和最新版 死後の手続き』より「失敗しない“老親との同居”を全文転載。
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もはや1割しかいない「3世代同居」家族
波平とフネ夫妻。その長女のサザエと夫のマスオに、一粒種のタラオ。さらにサザエの弟妹、カツオとワカメの7人がひとつ屋根の下に暮らす、ご存知「サザエさん」の磯野一家。
こうした「親・子・孫」の3世代が一緒に暮らす家庭は、1980年には国民全世帯の半数を占めていた。また、当時は65歳以上の高齢者の7割が子供と暮らしていた。
時代は下って2015年、親子同居している世帯は全体の4割を切っている。3世代同居に至っては約1割しかない。
生産人口が都市部へ集中する傾向が強まったために「都市部の子供世代」と「地方の親世代」が分断されたことなど、理由は幾つか考えられようが、「元気な高齢者」が増えたことも大きなポイントだろう。
介護を受けたり人の手を借りることなく、自立して生活できる指標の「健康寿命」(16年)を見ると、男性が72・14歳、女性は74・79歳。
子供の世話にならなくても暮らしていける。そんな親世代が増えているのだ。
一般社団法人日本エンディングサポート協会の佐々木悦子理事長が指摘する。
「今は、嫁・姑問題に悩んだり、日常生活でお互いに気を遣うくらいなら夫婦だけで、あるいは単身で暮らしたいと考える高齢者も少なくない。
一方、子供の側が同居を考える最大の理由は「親の介護」です。離れて住む親の状態があまり良くない、事故を起こしたりしないだろうか……。そう考えて親に同居を切り出す方が多いはずです。その次に多いのは家事や保育園の送り迎えなど、子育てのサポート役として、親との同居を望むパターンでしょう」
今、同居を選択する人たちには理由がある。ただし親子であっても、いったん別個の世帯を持った者同士が生活を共にすることは決して簡単ではない。