同居は誰のためなのか? 親の意思を再確認
話し合いの中で、1度基本に立ち返るのも有益だ。同居は誰のためなのか、と。
実家、つまり親の住まいに子が合流する場合は、さほど問題は大きくないだろう。理想的な同居を続けている吉田さんもそのケースだった。
「母からすると、慣れ親しんだ地で暮らせているというのは大きいと思います。違う町への引っ越しが前提だったら、母は同居に同意しなかったでしょう。ここには昔からのお友だちもいるし、今は月に何度か社交ダンスにも通っています」
前出の佐々木氏も指摘する。
「地方に住む親を自分の住む町に呼び寄せる形の同居は、リスクが高い。親にとって、長年住み慣れた土地と知己から切り離されることは非常な負担。加えて、地元では近隣と家族同然の付き合いをしていても、都市部のマンションでは隣に住む住民の顔も知らないケースも珍しくない。人間関係が大きく違うことでストレスを感じる親は多いはずです」
それを見越して、同居に二の足を踏む親は多い。
「もちろん親を心配する子の気持ちは尊い。でも、子供側は同居ありきではなく、まず親の意思を確認することが大切です。場合によっては同居ではなく、家の近くの高齢者住宅への住み替えを提案するなど、柔軟に考えた方がいいでしょう」(前出・外岡氏)
同居に踏み切るなら、どうしたらお互いに気持ちよく暮らせるかをしっかり考えよう。
「せっかくの同居が親のためにならなかった、ということのないよう、家族の温かいサポートは必須です。
高齢になって環境が変わるのはとても心細いし、身体の不調で落ち込んでしまうこともあります。小さなことですぐに怒らず、家族の間でよく笑えるような雰囲気づくりを。
近隣に親との同居を伝えておいたり、地元の地域包括支援センターを確認しておくなど、いざというときに自分たちだけで抱え込まないようにする備えも怠りなく」(前出・八ツ井氏)
先人たちの教訓を活かして乗り越え、大いに実りある同居生活にしたい。
(初出『週刊文春』2019年1月31日号)