言って後悔……「少し節約したら?」で同居解消
神奈川県川崎市に住む守屋節子さん(仮名・76)は、2世帯住宅に夫と住んでいる。3年前まで息子夫婦と2人の孫も暮らしていた。同居を解消したのだ。
解消の理由は、義理の娘との“些細な衝突”だった。義理の娘は百貨店の外商も訪れるような裕福な家庭に育ったという。
「だからか、毎日の買い物が高級品ばかり。ウチが100グラム160円の豚肉を買うのに、あっちは2000円もする牛肉を買ったり。お豆腐とか牛乳も一番高いものを買うんです。
見かねて『子供も小さいんだし、少し節約したら?』って口を出したんです。その時は何もなかったんですが、後で息子から『買い物の中身まで見張られて、文句言われる……』と言ってたと聞きました」(守屋さん)
守屋さんにとっては好意のアドバイスだったが、「過剰干渉」と受け取られたのだ。その後は何となくギクシャクした関係が続き、結局下の孫が小学校を受験する際、通いやすい都心に移ると言って引っ越した。同居は2年で終わった。
守屋さんは「育ってきた環境が違う者同士が一緒に生活することに、私の準備が足りていなかった」と反省する。
子供たちは十分な収入があるから贅沢しているのか。あるいは育った環境がそうさせているだけなのか。デリケートな話題ではあるが十分に話し合い、金銭感覚をすりあわせて、納得しておくことが肝要だろう。
金銭トラブルを避けるための“情報開示”
同居に金銭面のトラブルは多い。「同居にかかる費用を誰が負担するのか」という問題だ。
相続コーディネーターの曽根恵子氏が指摘する。
「同居を始める前に、必ず親の資産の確認をして下さい。金融資産の額や預け場所、不動産の有無。重要なのは、一緒に住まないきょうだいにも情報を開示・共有することです」
たとえば、母親と同居する長男一家が、日常的な出費の一部を母親から援助されるケース。
「これは、同居していない弟や妹は、兄が自分たちの相続財産を“先食い”していると受け止めがちです。“親のおカネを何に遣うのか”という線引きを明確にし、全員で了解しておくことが大切です」(同前)
前出の江本氏もいう。
「たとえば娘が離婚し、シングルマザーとして実家に戻って10数年。もはや娘にとって実家は“親の家”というより“自分の家”という感覚になるもの。別居しているきょうだいより親を介護してきたという自負もあります。そんな状況で親が亡くなり、きょうだいたちが『この家を売って、財産を分けよう』と主張すると当然ぶつかります。遺産といえるのは家だけ、ということが多いので、遺産分割で揉めるんです」
金銭に関することは、親の健在なうちにきちんと話し合っておくべきだろう。