早めに同居することのメリットは大きい
まず最初の問題は「いつから同居するか」だ。
同居を始める最も多い理由、親の介護。だが実は「介護を目的とした同居」は難しいと佐々木氏はいう。
「一緒に住む以上は“家族”です。しかし、同居と同時に介護がスタートしてしまうと、それはもはや家族ではなく、“介護者”と“被介護者”になってしまう。お互いにとって決して幸福な関係ではありません」
それを避けるためには、同居のスタートを早めることが答えのひとつになる。
「親が元気なうちに一緒に住み、家事や家計を分担し、孫と遊ぶ。そういう営みを通じて、本当の意味での家族になっておくことが重要だと思います」(同前)
介護や同居トラブルなどに詳しい、実家相続介護問題研究所の江本圭伸代表も指摘する。
「老いた親は、子に対して『悲劇のヒロインを演じていたい』という気持ちを抱くことがあります。つまり、『構ってほしい』『助けてほしい』という依存的願望です。それは、ともすれば『思ったように大事にされていない』という被害者意識にも繫がる。
70代のお姑さんに『嫁は味が薄くて不味いご飯しか出してくれへん。虐待や』と涙ながらに相談されたことがありました。お嫁さんに聞くと、『糖尿病だからわざわざ薄味のご飯を用意していたのに……』という。
こうしたボタンのかけ違いは、子供世代が50~60代で、同居開始が遅いことによるコミュニケーション不足が原因のことが多いのです」
加えて、介護のための同居は、必要に迫られ十分な準備もなく始まることも多いが、それもリスクになる。遺言作成の代行や高齢者施設選びの相談など、介護・福祉問題に特化した活動を行う外岡潤弁護士が語る。
「介護のための同居は、金銭的にも決して簡単なことではありません。
たとえば自宅で看られなくなったらどうするか? 介護保険を超える自腹の支出が必要になった時、誰がお金を出すのか? 親の医療依存度が高まると、子供の負担は当初の想像より大きくなります。最悪の場合、親子が共倒れになる危険もある。あらかじめ、きちんと将来のイメージをもち、金銭的裏付けを確認することが最低限必要です」
そう考えれば、同居から介護へ至る“助走期間”は長いに越したことはない。
「同居適齢期があるとすれば、“親の介護が始まる前”。子供世代が40代のうちに、親子で同居について話し合いを始めておくべきだと思います」(前出・佐々木氏)