厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。(前編より続く)

※「週刊文春」2012年7月26日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

「夜のパソコン」ストレスと食事が精力を弱める

「今の若い人には“若腎虚”が多い」と、前出の山岡氏が言う。

「原因は何なのかと探っていくと、やっぱりストレスと食事に突き当たる。セックスは、副交感神経で勃起する。気持ちがゆったりとしている時なんです。

 ところが、夜にパソコンを見て大脳を刺激したり、交感神経を興奮させる刺激物を食べてばかりいる。唐辛子やニンニクなどがそうです。勃起力も落ちます。また、加工食品などは、カロリーやたんぱく質はとれるが、ミネラルが不足している。腎に大切なのはミネラルなんです」

ADVERTISEMENT

 つまり、不規則な生活と偏った食事が、勃起を弱めるだけでなく、精力剤を吸収できない体質にしているのだ。たった一回スズメバチを食べたくらいでは、体が反応するわけがなく、まずは生活を変えるのが先だろう。そして、山岡氏はこう言うのだ。

「人間にとって、寝るのが一番の精力になるんです」

©iStock.com

23時~5時の睡眠がカギ

 この睡眠こそ、女性の老化を遅らせ、セックスの寿命を延ばす秘密がある。そう教えてくれたのが、かつて、中国で「赤脚医生(裸足の医者)」と呼ばれた李宝珠さんだ。赤脚医生とは、無医村を走り回って医療活動を行う医師のことである。

 日本に留学後、現在はイタリアミツバチの子を原料にしたサプリメント「バイタルビー」を製造販売する株式会社シンギーの女性社長となった李さんが、最近、本を読んで驚いたことがあるという。

「ハーバード大学の客員教授である根来秀行先生の本に、3大ホルモンを多く分泌する時間帯が最先端医療の研究でわかったと書いてありました。それが、漢方の古典『黄帝内経』に書かれた時間と、ピッタリと一致していたのです」

 根来氏は、著書『眠っているうちに病気にならない体をつくる本』など、アンチエイジングで知られる医師である。

 根来氏は脳の視交叉上核にある「時計遺伝子」が、体内時計の役割となって、睡眠中にホルモンの分泌を行うと述べている。李さんが驚いたのは、東洋医学にも、“臓器の当番(時間)”という体内時計の概念があるからだ。この臓器とは、西洋医学でいう「臓器」ではなく、それぞれの「機能」を指している。