一歩一歩を大事して同じ土俵で話し合える
確かに、日本で活躍の場が持てず、誰からも必要とされていない人が、自分を理解してくれない日本人に対して「アホとは戦うな」などと言いたい気持ちは分かります。でもそれ、無責任な他人からその物言いを面白がられることはあっても、家族や仕事といった取り組むべき大事な場で相手にされていなくて浮きまくっているから日本に居られなくなっているだけなんじゃないでしょうか。
地に足の着いた生活をして、かけられる期待に応え、一歩一歩歩いていくことができているならば、おのずから日本国内での仕事の幅も増え、海外での似たレベルの人たちと同じ土俵で敬意をお互いに持ちながら話し合うこともできるようになるはずです。
「いや、お前がイケてないだけだろ」
それでも、海外の文化や仕事、言語、人種や宗教といった、いろんなモノに対する憧憬から「日本を出ていろんなものを見ていこう」というのは良いのかもしれません。私だって、高校時代からいろんな国に留学したり旅行をしたりしてきました。大人になり子どもを抱える歳になっても、日本には日本の良さがあり、海外にはいろんな合理性があると感じるのは学びであり幸せです。こうやって海外をうろうろすることになったのは、自分なりにできることをしっかりと踏み固めてきたから可能なのだという自負もあります。
頑張って生きてきて、自分自身の経験や見識を持って、日本社会はこうでなければ駄目だ、海外と比べて日本はもっと開明的であるべきだ、と進むべき道を見据えて提言するとか意見するとかならいいと思うんですよね。でも、海外の人たちに向けて、なぜか「日本には魅力がない」「日本は良くない国だ」と言って回る人たちを間近に見ると「いや、お前がイケてないだけだろ」と突っ込んでしまいます。そこまで言うんなら、自分で何かすれば?
アメリカ人と話をしていると、彼らもまた「なんでトランプさんなんて大統領に選んじゃってるんだろう、我が国民は」と嘆いたり「訳のわからん大統領を接待してくれたことをアメリカ人を代表して日本人にお詫び申し上げる」とかギャグを言ったりするんですよ。ま、民主主義のいいところは、国家元首だろうが大統領だろうが首相だろうが与党だろうが、アホやと思ったらアホだと言える自由があることなんですけどね。でも、出張の最終日に私のアメリカでの仕事相手がわざわざホテルの部屋まで来て、小声で私に言いました。
「実は俺、トランプを支持しているんだ」
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ついにこの日が来てしまった……。文春オンラインの謎連載、
その名も『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』。