厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。

 連載最終回となる今回は、病と闘いながらも水素によって性生活が豊かになった2人の男性の体験談を聞いた。(前編より続く)

※「週刊文春」2012年10月11日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

便乗インチキ商品に注意

 「水素水」に人気が殺到しているものの、水に取り入れられる水素量は限度がある。1日に飲める水の量も、2リットルがせいぜいだ。厄介な問題が、奇跡の効果に便乗したインチキ商品やマルチ商法まがいが実に多いことだ。

「僕の名前や顔写真を勝手に使って販売しているケースがあり、内容証明を出しました」(日本医科大学大学院・太田成男教授)

 以前、国会で話題となった「なんとか還元水」を始め、水素が入っていない水素水もある。水素はペットボトルの容器を透過するので、ペットボトル商品はインチキだと思った方がいい。薬事法により効果効能は謳えないのに、「がんが消えた」と銘打つ商品も怪しい。現在、消費者庁が水素の認定を視野に検討を開始しているという。

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 水素水とは別に、鼻からの吸入や点滴などによって、より濃度の高い水素を体に取り込む方が効果的だろう。都内にある「水素館」には吸入器材やカプセルが揃えてある。水素館で鼻にチューブを入れて吸入をすることができる。また、同様の処方を行うクリニックもある。

 では、水素は人間の性機能にどんな影響を与えているのだろうか。

体験談1:国指定の難病を抱えた60代男性

「体験した人にしかわからないから、僕の話は信じられないかもしれません」と切り出したのは、北海道で工業関係の会社の役員を務めるS氏(64)だ。

 ホテルのラウンジに現れたS氏は、メガネをかけた温厚そうな男性で、見た目は50代に見える。どこにでもいそうな物腰柔らかな男性だが、彼は25年間、セックスどころか勃起と無縁の人生を送ってきた。

 S氏の病名が判明したのは、32歳の時だった。

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「当時、アドベンチャースキーでよく高い所からジャンプをしていたのですが、背骨をケガして、3カ月入院することになりました。退院後、腰の痺れは治ったのに、足の痺れが治らない。僕の後輩の循環器系の医師が『先輩、ドップラー検査をやってみましょう』と足首の脈を計る検査を勧めてくれました。すると、『先輩、大変なことです!』と言いだしたのです」