異変は続いた。歩くスピードが自然と速まっている。懐かしい躍動感が体に蘇った気がした。また、がんを患って以来、夜中に最低一度はトイレに立っていたのに、それがなくなった。
1章で紹介したように、就寝中に3回以上トイレに行く人は動脈硬化の前兆である。膀胱の筋肉に血液が行き渡らないため、尿を溜められず頻尿になり、EDにもなる。また、
「今まで起床は遅めだったのに、朝5時半に目が覚めるようになり、まずトイレに行きます。バナナのような一本が出て、腰がすっきりする爽快感があるんです。便秘気味だったのが快便になりました」
これも3章で紹介した、「臓器の当番時間」の「大腸系」の時間に当たる。午前5時は排泄タイムだ。西洋医学でいうホルモン分泌を促す「脳の時計遺伝子」の通りに体が動くということは、健康の証だろう。
また、排泄の爽快感は8章で紹介した。爽快感がない排泄は、陰部神経と括約筋の衰えであり、EDやオーガズム障害の兆しだ。
自然な形で性に結びつくのが「夫婦の愛」
様々な性のアンチエイジング要素が体に現れた黒澤氏の性生活は、根底から変わった。朝勃ちだけでなく、それからというもの週2回の夫婦の営みが続く。平均1時間ほどだ。しかし、回数が重要なのではない。黒澤氏が言う。
「オスが求めるような20代の性交ではなく、すごく自然な形でお互いを愛し合えるようになりました。2人でおいしいものを食べに行って感動したり、旅行先の風景を見て感動したりするような、お互いが一緒に心を躍らせるように、自然な形で性に結びついていく。生きている実感を感じる、2人にとって重要なものとなったんです」
今年のゴールデンウィーク、2人はハワイで10日間過ごした。毎日、2人は愛し合ったという。旅先での楽しさがそうさせたのか、1日に2度も愛し合える姿に、お互い呆れながら、がんを境にどんどん健康になっていることに気づいた。
黒澤氏はこう話す。
「100歳まで生きようなんて思いません。今、やりたいことがあるので、燃焼できればいい。やりたいことがあれば、引退はありません。社会の一員として役に立ちたいことがあるから、日々、生きるんです」
まだ未知数の水素だが、マウス実験で平均寿命が延びることがわかっている。
人間の最大寿命は、遺伝子プログラム説では120歳。水素で細胞が元気になっていけば、生きる意欲に体が伴っていくかもしれない。限界年齢に多くの人が近づける時代が来た時、高齢者の性に何をもたらすだろうか。心の充実の象徴にもなれば、諍いのもとにもなる。水素は人間社会に想定外の変化をもたらすかもしれない。
連載「ヒトは何歳までセックスできるのか?」記事一覧
■漢方医学では「男64歳、女49歳限界説」も
前編:ヒトは何歳までセックスできるのか?
後編:「定期的にバイアグラ」性のアンチエイジングが寿命を延ばす理由
■日本男児肉食化の鍵を検証する
前編:あなたの男性力は「巻き尺」で測れる
後編:「炒めたタマネギ」で性欲を高める
■性交を成功させる「ゴールデンタイム」
前編:鹿のペニス、スズメバチの子……あらゆる「精力剤」は信用できるのか?
後編:「元気ですか?」の語源と「体内時計」で読み取る正常なセックスとは
■オーガズム人体実験でわかった女性の性欲
前編:オーガズム人体実験でわかった女性の性欲
後編:「セックスって、何がいいんですか?」と言う女性たちへ
■中国医学の秘伝「あなたの精力を高める食べ物」
前編:秘伝!「性欲は強弱ではない」今すぐできる体質別の改善術
後編:あなたの精力を下げてしまう「避けるべき食材」ちゃんと知っていますか?
■性への「無関心」「嫌悪」が倍増する日本人
前編:性欲のスイッチはこう入る! 解明された「脳の性的メカニズム」
後編:“ギリシャ化”が鍵 性欲減退を「年代数×9」の方程式で乗り越える
■「勃起プロジェクトX」どれが効くのか精力剤
前編:「精力剤」が恥ずかしがり屋の日本人に浸透するまで
後編:「性教育をすると抗議が来る」知識が乏しすぎる日本のコワい話
■異性を惹きつけるための「フェロモン体操」
前編:3分で実践! 「とんび座り寝」ポーズであなたの“真のモテ度”がわかる!
後編:必読! “セクシーエネルギー”を身体に満たす「腰フリフリ体操」
■“夢の性器”をデザインする美容整形
前編:刺激度が抜群に飛躍する!? 浮気を許さないアメリカ発「性の美容形成」とは
後編:中国で「偽バイアグラ」が爆増中!? 経済成長がもたらす「セックス2.0」