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――たしかに、トラッキングアプリには妊活のイメージがあります。

ハヤカワ もっとシンプルに「生理の日を知りたい」というニーズもあると思いますし、既存のアプリがミスリーディングだと感じるときもあります。たとえば、排卵日前後を「妊娠しやすい日」と表現するものもあるのですが、厳密に言うと、排卵日後は妊娠する確率はほぼないです。

 それに、女性同士でお付き合いしている友人いわく、「妊娠しやすい日」と言われても「いや、妊娠しないし」という感じらしい(笑)。言われてみれば、そうですよね。もっとフラットなものがあってもいいのかなと思っています。

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インバウンド客に「日本人は恥じらっている」は通じない

――インフラに関しても、取り組んでいると聞きました。

ハヤカワ そうですね。今、駅構内に生理用品を置くことを、都内の電鉄4社さんと前向きにお話しさせていただいています。オリンピックまでにトイレで買える。それが難しければ、駅の売店に置いてあることが認知されるといいんじゃないか、と。

――えっ、駅の売店にあるんですか。

ハヤカワ あるんですよ。店頭には出てないんですけど、実は、言うと裏から出てくるんですよ。

 宿泊施設でも、基本的には表には置いてません。言えば出てくるんですけど、たとえば国外から来た人に「日本人は恥じらってるから、言えば出てくるらしい」なんて、絶対わからないと思うんですよ!

 

――たしかに……。

ハヤカワ オリンピックでインバウンドも増えてくるので、おもてなしの一環としても、もっといろいろなところに置いてあるのが「当たり前」になるといいなと思うんですよね。

みんなが膝を打つような問題提起を

――ビジネスとしてだけではなく、より大きな変革を狙っているように見えます。

ハヤカワ 2019年のカンヌライオンズのPR部門でグランプリを受賞した企画に、ドイツ企業による「タンポンブック」があります。

 日本でも、生理用品が軽減税率対象外であることの是非が議論されていますが、ドイツでは本にかけられる消費税が7%であるのに対し、生理用品は軽減税率の対象にならず、19%。それを逆手に取って、15個のタンポンを「本」として販売した企画です。「なんで本は対象になるのに、生理用品はならないんだろう」と考えさせられますよね。

生理をめぐる文化を変えたい、という気持ちはあります。今挙げたような、みんながはっとするクレバーな問題提起をしていきたいですね。

 

写真=深野未季/文藝春秋