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「歴史書を繙かないような人間は、首相以前に政治家としても失格である」

――政治家の歴史観について伺います。2002年、参議院議員になってすぐに出版された『内閣総理大臣』という本の中で、「歴史書を繙(ひもと)かないような人間は、首相以前に政治家としても失格である」と書かれていますね。そうしますと、今の首相は? ということが気になってきます。昨年末には、百田尚樹さんの『日本国紀』を買ったとツイートしていました。

話題を呼んだ安倍首相のツイート

舛添 やはりもうちょっと本を読んだほうがいいなという感じがします。私は安倍晋太郎先生とは非常に仲が良くて、しかもあちらは下関の選挙区、こちらは北九州の出身ですから、関門海峡を挟んだ両側。共通の友人が大勢いるんです。晋太郎さんが亡くなって、安倍晋三が最初の選挙に出る時、私は女房と2人で下関に入って応援に行ったこともあります。だから、そういう感じで安倍さんのことはよく知っているつもりです。

 青木理氏の『安倍三代』という本に詳しいですが、かつて在日朝鮮人や韓国人が安倍晋太郎さんを支援したんです。下関は林家が地元財界を全部押さえていて、安倍は田舎のほうからやって来た新興勢力でしかなく、大都会に足場がなかった。その時、在日の人たちが支えたんです。安倍晋太郎さんと会うと、そうした共通の友人について「舛添さん、ちゃんと彼の面倒を見てやってくださいよ」という話をしていました。日本会議みたいな人たちに支えられていると、そういう面は絶対に出せないと思いますが。

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安倍さん本人は、ゴリゴリの右翼というよりある意味で真空

――安倍首相自身の歴史観を感じることはありましたか。

舛添 安倍さん本人は、ゴリゴリの右翼というより、ある意味で真空なんでしょうね。支援している人たちが多ければそちらに行きますよ、という感じで。ずっとそういう人たちと付き合っていると、例えば「自衛隊員の子どもがいじめられている」から自衛隊を明記する改憲、という発想になる。「交戦権を認めないと集団的自衛権もだめですよ」という発想ではなくて、耳学問なんですよ。

 私が都知事の時は、ある会合で母の洋子さんと月に1回、横に並んで食事をご一緒する機会がありました。率直に「総理、どうされていますか?」という会話をしていたから、そういう場では「関門海峡の仲間」みたいな感じがしていましたけれども。

――舛添さんから安倍首相に読んでほしい本を挙げると、何かありますか。

舛添 やはり歴史でしょうね。定評がある古典がいいと思います。エドワード・ギボン『ローマ帝国衰亡史』、アーノルド・トインビーの『歴史の研究』。つまり、世界史的な視点があったほうがいい。例えば、アレキサンダー大王がなぜだめになったのか、ギリシャ、ローマはなぜだめになったのか。世界システムの変遷、大きな流れをつかむ必要があるんじゃないですかね。日本史に集中したら、ナショナリスト史観に偏ってしまうので。

 

――舛添さんの父・彌次郎さんは、戦前に福岡県若松市(現・北九州市)の市会議員選挙に出た時、投票権のあった朝鮮半島出身者にアピールするためハングルのルビを振ったポスターを作りました。それを、「日本人ではないのではないか」と舛添バッシングの材料にするものもいました。

舛添 そうなんです。当時はハングルで名前を書いて投票してよかったわけです。嫌中、嫌韓にまつわるヘイトスピーチは歴史が浅いと感じるのは、そういう経験があるから。