こりゃ、駄目だ。石原さとみが主演の『Heaven? ~ご苦楽レストラン~』、初回の数分間を見ただけで気力が萎えた。
謳い文句には“至極のフレンチレストラン・コメディ”とかあったけど、コメディが泣くよ。笑いのレベルが小学生レベルなんだ。
石原が扮する謎の女性、黒須仮名子が、金に糸目をつけず、理想のレストランをオープンさせる。伊賀観(福士蒼汰)などスカウトされたスタッフは、現地に着いて腰を抜かす。
建物こそ立派だが、駅から遠く、隣は墓場だ。トイレも工事途中で、保健所の許可がおりない。じゃ、墓場に隣接した葬儀場のトイレを借りてオープニング決行って、いつの時代のギャグだ。子供も笑えない。
わがままオーナーの仮名子が実現性のない思いつきを命じるたびに、スタッフの頭上に「諦観」の文字がCGでモヤーと浮かぶ。
佐々木倫子さんの原作マンガを踏襲した画面処理らしいが、ただ真似すりゃいいってもんじゃない。佐々木さんといえば『動物のお医者さん』の作者だろ。これほど安易な脱力ギャグを描いたとは思えない。
それでも我慢して、二十分、三十分と見た。一向に面白くならない。テンポが悪すぎる。美人オーナーの迷惑キャラと、彼女に翻弄されるスタッフの諦観を山場もなく説明するだけ。
しかし二話目で、じりっと盛り返した。そう、翌週も見たんだよ、俺。これまでも、石原の派手な容貌と高飛車で蓮っ葉なセリフを使えば、コメディ一丁上がりみたいなドラマを何本も見せられた。しかしそこで、ときおりキラリ光る表情を浮かべる彼女の演技も目にしているからね。
第二話では、一部で天才シェフとも呼ばれた小澤幸應(段田安則)の過去と、彼のメンタルが描かれる。腕は超一流だが、とことん運がない。オーナーが事故をおこしたり、三ツ星レストランでは食中毒発生、独立しても経理に金を持ち逃げされたりと、勤めた店がすべて潰れた伝説の男だ。
おまけに自信を喪失すると、料理も変化する。石原に「美味いけどパンチがない。塩気が足りない」といわれ気力が萎えたり、「自由に料理して」の一言で塩分たっぷり、パンチのあるフレンチを作る段田安則の演技で、中盤からドラマがどんどん動いていく。
バカっぽい役をやらせても、華のある顔と勢いあるセリフを何箇所かで見せてくれるのが石原だ。なぜ豪華レストランを経営するだけの資金があるのか。経歴は。そんな謎も徐々に明かされていくだろう。
岸部一徳、勝村政信、志尊淳など他のスタッフにスポットが当たる時、石原がここぞというシーンで座長らしさを見せれば成功かもというのは、お気楽視聴者の甘い予想だろうか。
INFORMATION
『Heaven?~ご苦楽レストラン~』
TBS系 火 22:00~
https://www.tbs.co.jp/Heaven_tbs/