“乱交島”と呼ばれる「リトルセントジェームズ島」
《(未成年の少女である)被害者は半裸か全裸で、同じく全裸のエプスタイン容疑者をマッサージした。すると、エプスタイン容疑者はエスカレートして陰部を直接、間接にまさぐった。こうしたときには通常、エプスタイン容疑者は自慰行為をしながら、被害者にも体を触らせ、さらに性玩具や手で被害者の陰部も触っていた》
この犯行の描写は起訴状によるものだ。場所はエプスタイン容疑者のフロリダ州の別荘だが、別荘はほかにもあった。カリブ海に浮かぶ島「リトルセントジェームズ島」。エメラルドグリーンの海に囲まれた島には、衛星写真でもはっきりと大邸宅が視認できる。ブルームバーグの報道によると、数々のセレブ達も訪れたとされるこの島は、いま地元民には「乱交島」「小児性愛島」と呼ばれている始末という。
実はエプスタイン容疑者の疑惑が話題になったのは今回だけではない。その事実を丹念に追った地元紙「マイアミ・ヘラルド」は、14年前、別の被害者の証言を元に地元警察が捜査を始めていたことを報じている。だが、2008年、起訴されたのは買春を誘った罪だけ。エプスタイン容疑者が塀の中で過ごしたのはわずか13カ月。捜査の過程で、残りの人生を刑務所で過ごすに十分な複数の犯罪が浮上していたというのに。
なぜか。マイアミ・ヘラルドは糾弾する。「正義の『倒錯』」があったと。
ビル・クリントンもやり玉に
一連の報道があったのは昨年末から。その後、捜査当局が改めてエプスタイン容疑者を逮捕したわけだが、報道の核心は10年以上前の捜査の不作為の追及にある。焦点は、当時フロリダ州マイアミの連邦地方検事をつとめ、エプスタイン容疑者側と交渉し、数十あった起訴事実を一桁に絞る合意を導いたアレクサンダー・アコスタ。その後の17年、トランプ政権の労働長官に収まった。
「こういう事件は複雑なんだ。特に子供が絡むとね」。そんな記者団への言い訳で世間もトランプ大統領も納得するはずもなく、アコスタは12日に辞任。だが、メディアの注目は他にも転じている。
やり玉に挙がった一人はビル・クリントン元米大統領だ。
「クリントン大統領は何も知りません。ジェフリー・エプスタインが数年前にフロリダで罪を認めたひどい犯罪についても、最近ニューヨークで告発された同様の犯罪についても」
クリントンの事務所は7月8日にこんな声明を発表し、2002年と2003年にエプスタイン容疑者と慈善活動の一環で4回旅行をともにしたことを認めたが、話題はさらに拡散を続ける。エプスタイン容疑者の交友関係にある人物の連絡先を控えた「黒い手帳」がその震源の一つだ。2004~2005年にかけての半年、エプスタイン容疑者の下で働いた元執事が、任務を離れた後も保管し続け、米国の裁判所に提出されていたのだ。