ハーメルンの笛吹きみたいな泡沫政党が元気で、ああ、ノイジーマイノリティってこんなに面白かったんだと「れいわ新選組」や「N国党」を見ていて思うんですよね。
かつて、選挙における泡沫と言えば羽柴誠三秀吉さんが何かが燃えて得られた軍資金を元手に津々浦々の選挙戦に参画しては無事落選し、東京では又吉イエスさんがカルト的な人気を誇る泡沫戦線を守り抜き、一紙入魂の選挙ポスターで異様な存在感を誇った後藤輝樹様はバイトして出馬資金を集めては面妖な選挙戦を繰り広げる。いいですね、泡沫候補、本当にいいですよね。
しかしながら、これらの泡沫候補の時代は高度成長が歴史の1ページへと遠ざかるごとに怪奇さを失い、そしてスマイル党党首のマック赤坂さんが泡沫候補常連としてのプライドをかなぐり捨てドクター中松さんに先駆けてついに港区区議選に勝利してしまうと、著名泡沫論争は平成の風景として忘れ去られる運命を辿りました。残念でなりません。もはや千葉ロッテ以外信じられなくなりました。
今回の選挙でも、歴戦の泡沫・野末陳平さんが東京選挙区で敢然と参院選に立ち向かう事前報道があり泡沫界もほんのり湧き立ちましたが、日本の政治ももう駄目なのかな、政治の舞台を使ったカルト的な表現の場は、もう外山恒一さんのあの伝説の政見放送を最後に冬の時代を迎えるのかなと思ったんです。
泡沫界・冬の時代かと思いきや、颯爽と登場した「N国党」
そしたら、「NHKから国民を守る党」が颯爽と登場。いやー、かなり頭おかしくて最高ですね。私、大好きですこういうノリ。しかも、政党として丸ごと馬鹿馬鹿しいというのが素晴らしい。いままでは候補者単品で変人が泡沫候補として登場し、創意工夫を凝らした個性的な選挙戦を展開し、そして開票速報では当落線に1ミリも絡むことなく見事落選し、供託金とともに散り、そして伝説を残すのが定番でした。
しかしながら、そういう点在する泡沫候補が持つ才能の、点と点とを繋いで線を引き、そればかりか墨汁たっぷりの極太の筆で上書きし、泡沫候補が心おきなく公認候補として立候補できる壮大な集金システムの、「政党そのものが泡沫のためにある」という幻想的な一大組織を築き上げてしまったのです。凄い。これは凄いことだと思うよ。
メディアの制約をうまく突いたN国党の戦略
出てくる候補者は選挙区で全部落選する、それも従来の泡沫候補と変わらず何一つ選挙戦でいいことなく惨敗する。ただ、NHKで、各民放で、選挙速報のサイトで、すべての候補者をきちんと公平に扱うというメディアの制約をうまく突き、過疎化が進んで候補者擁立を絞らざるを得ない地方の一人区で自民党と野党統一候補に並んで「N国党」なるインディー団体の知らない候補者の名前が晒され続けるという凄まじい事態が、ほとんど放送事故のように延々と続けられることになります。固唾を飲んで開票状況を眺める日本の心ある有権者の脳裏に刻まれ続ける、N国党の3文字。もうこれだけで泡沫を愛する心がざわざわと湧き立つんですよ。