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鳥取一の進学校・米子東をセンバツに導いた「超合理的思考法」とは――2019上半期BEST5

部員16人の公立校はなぜ躍進できたのか

2019/08/13
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「野球はまだまだ科学的に突き詰められるんです」

 紙本の話を聞いていると、野球監督というよりも、若手のビジネスマンと話しているような印象だ。高校野球という伝統が重みをもつ競技だからこそ、それがとても新鮮に感じられた。

 日本全国から選手が集まり、プロ野球選手の予備軍のような私立高校もあるのが、現在の高校野球の現実でもある。

 それでも紙本は、米子東のような地方の公立校でも、十分に戦えると語る。

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「この前、ある大学の先生が言っていたんですが、野球って非常に未成熟なスポーツなんだそうです。例えば陸上の100mなんかは1000分の1秒を削り出すために科学的にいろんなことが分かってしまっている。そうなると、どうしても最後は生まれ持ったものが必要になってきます。でも、野球はまだまだ科学的に突き詰める要素がいくらでもある。だからこそ、ウチの様な地方の公立校でもいくらでもやりようはあると思います。

 例えばいま、ウチの部員は16名です。でも、その少なさこそが1番のウチのストロングポイントだと思います。短時間でたくさん練習できますし、中には中学校でレギュラーじゃなかった子だっているわけです。でも、そいつが本気でセンバツのレギュラーになろうと思っている。だって、16人ですから。誰1人としてぶら下がっている選手がいないんです。これはチームとしてデカいですよ。みんなが本気なんです」

中国大会で強豪との接戦を制してきた米子東。センバツではどんな戦いを見せてくれるだろうか

 自分で必要なものを見定め、自らで日々の練習をマネジメントしていく――そんな日常を続けることで、選手には狙い球を絞る習慣ができた。無理なものは無理と割り切る。そんな思い切りの良さもあり、中国大会では勝った全試合が2点差以内という僅差の勝負で圧巻の粘り強さを見せた。

 その快進撃はどこまで続くのか。

 米子東高校がセンバツで見せる戦いが、楽しみになってきた。

写真提供=米子東高校

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