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「怖い話」が読みたい

2019/08/11

genre : エンタメ, 読書

 再びバイトができると喜んで男性との待ち合わせのカフェに行きました。すると驚くことに、男性の長かった髪の毛はバッサリと切られて短髪になっていたんです。

「髪の毛、切られましたね。とてもお似合いですよ」

 そう言うと、男性は嬉しそうに微笑まれて、

「女性に褒められるのは初めてです。すこし自分に自信がつきました。他にもなおした方がよいところはありますか」

 男性に感謝されたことに気をよくして、私は遠慮なく思っていることを話しました。

「そうですね……、相手の体型を気にする女性は多いと思います。もっと痩せた方が格好いいと思いますよ」

 まだ2度会っただけの他人に対して随分失礼なことを言ってしまったと思いますが、男性は嫌な顔ひとつせず、「わかりました」と頷きました。

 この日も1時間が過ぎようとする頃、男性は、何か意を決したように、

「あの、今日はプレゼントを持って来ました。受け取ってくれますか」

「え、本当ですか!?」

 まったく想像していませんでした。男性から、リボンの付いた大きな紙袋をカバンから取り出して渡されました。

©iStock.com

 紙袋の中身は、クマの縫いぐるみが付いた帽子でした。正直なところ、この帽子は遊園地などで被るとおかしくはないけれど、普段街中では被れないな、とは思いました。そうは思いましたが、この男性が、クマのグッズは何かないかと、頑張って探し回って選んでくれたのだと思うと嬉しかったです。

「ありがとうございます。大切にしますね」

「女性にプレゼントして喜んでもらえたのは初めてです」

 男性が喜んでくれると、何となく自分も人の役に立てていることが嬉しくて、このお仕事を楽しいと思えました。

 そして、また1週間ほどが経った頃、あの男性から指名がありました。

 いつものように待ち合わせのカフェに行くと、男性は右足を引きずっています。足を怪我されたのですかと尋ねると、ダイエットしようとマラソンを始めたのですが、慣れない運動で足を挫いてしまって……と苦笑いを浮かべます。前回、もう少し痩せた方が良いと助言したことを素直に受け止め、実行されていたのです。

 なんて素直で努力家なんだろう。ますます好意を懐きました。

 男性との話も1時間が過ぎようとした頃、再び男性が「今回もプレゼントがあるんです」と、カバンから袋を出しました。

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