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「あなたの抱えてるその縫いぐるみ、何か嫌な感じがする」

「え、何を言ってるの? この縫いぐるみはバイト先のお得意様からもらったんだから、そんなこと言わないで」

 すこしムキになった私の言葉など聞こうともせず、他にもらった物はないかと聞いてくるので、男性からもらった、縫いぐるみのついた帽子とスリッパも見せました。

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 これらを一瞥するなり、友人は、有無を言わさぬ圧力で忠告してきたのです。

「その3つを持って、いますぐ三木住職のお寺に行こう」

 こうして私はこのお話をお聞きすることとなった訳です。

 吉田さんの友人は少し霊感があるらしく、この3つに嫌な感じがするのでお祓いをして欲しいとおっしゃいました。

 私もその方と同じく嫌な感じを覚えました。そして彼女の話をお聞きして、私はあることを思ったのです。私は尋ねました。

「大変申し訳ないのですが、この3つの縫いぐるみの縫い目を切って、中綿を見てもよろしいですか」

 吉田さんは、渋々ではありましたが、了承してくださいました。

©iStock.com

 まずは、縫いぐるみの付いた帽子の縫い目を切りました。そして中綿部分を開いてみますと、中から大量の髪の毛が出てきました。

 この帽子をもらわれた時に、男性が短髪になっておられたのは、この中に自分の髪の毛を入れるためだったと思われます。

 次に、男性が足を引きずりながら来られた日にプレゼントされたものは、縫いぐるみ付きのスリッパだと伺いました。こちらも縫いぐるみの部分の中身を見せていただきましたところ、中から足の爪と思しき物が5枚、出てきました。

 そして、最後にプレゼントされたクマの縫いぐるみも中身を改めさせていただきました。するとそこには、前歯が3本入っていたのです。男性がマスクをされていたのは、風邪などではなく、前歯が無かったからではないでしょうか。

 ここでは詳しくお書きできませんが、髪の毛、足の爪、歯の他に、ある物が一緒に入っていました。これは、ある国で行われる呪いのかけ方の一種で、もしかすると、この男性はレンタル彼女を使って、他人に呪いを掛ける実験をされていたのかもしれません。

 私はすぐに、この3つのプレゼントをお焚き上げ供養しました。すると不思議なことに、吉田さんの体調も良くなっていきました。

 お経に「還着於本人」という言葉があります。他人にした行為や発した言葉などは、必ず本人に還ってくるという意味です。ですから、他人に優しく接すれば、やがて自分にも良い形で還って来ます。しかし悪い行いをすれば、悪い形でその方に還り、苦しむこととなるわけです。

 この話に出てくる男性は、今頃自分の発した呪いが還って来て、苦しまれているかもしれません。

※この男性の行く末は『続・怪談和尚の京都怪奇譚』の「鏡」に収録されています。

怪談和尚の京都怪奇譚 (文春文庫)

三木 大雲

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