日本最強との呼び声が高い“平庭闘牛”
本気で闘えば底力があり、日本最強との呼び声が高い。
「山形町は急峻な地形なので、祖先の南部牛は日頃から運搬で鍛えられたのに加え、厳しい自然環境に適合できる強い牛が残りました。また、新潟へ鉄を運ぶには2カ月もかかりました。その間、筋力トレーニングをしているようなものでした。鉄を運び終えると新潟で売られ、闘牛に駆り出されたそうですが、そこでは地元の牛を蹴散らしたと聞いています」と柿木さんは語る。
改良されて日本短角
最強の牛を求め、平庭闘牛には他地区から買い手が集まる。ここで活躍した2~3歳の牛を連れて帰り、4~5歳でデビューさせるのだ。
だが、冷涼な岩手の山間部の生まれだけに暑さには弱い。その対策として、暑さに強い黒毛和種との間で生ませた子が増えている。柿木さんは「全国で日本短角種や子孫がチャンピオンになっています。山形の牛は自然交配なので
闘牛を御して引き分けで終わらせる技術が必要
闘う巨体を御し、しかも引き分けで終わらせる勢子の技術は極めて高い。
最年少の勢子、當山亜斗夢(とうやま・あとむ)さん(21)は沖縄県の闘牛家の息子だ。勉強のために柿木さんの農場で就職したが、「手綱を切って牛だけ闘わせる沖縄とは比べものにならないほど難しい」と嘆息する。
柿木さんは「牛の行動の理由を、性格も含めて理解しないと御せません。攻める牛も、実は相手が怖いからやっつけようと、がむしゃらに攻めているだけかもしれないのです。そういう時に無理に引っ張ってやめさせたら、牛は何をやっても怖いとしか感じなくなり、次から闘わなくなってしまいます」と語る。
では、どうやって引き分けにするのか。